毎年クリスマスは朝から晩まで事務所で仕事

というのが繰り返されている。

ポツンと残った事務所で仕事を片付けると、

電気を消して鍵を掛ける、

「カチャ」

その音を確かめると、ゆっくりと歩き出す、

「ケーキでも買っていくか・・・」

といっても昔みたいに子供達が待っている

わけではない

シャンパンもワインにも縁のない下戸というのは

ただ街を歩くしか能がないのですよ

「そうだ まだ

  鬼姫様のプレゼントを用意していなかったな」

ショーウインドウが手招きをしている、

小さな包みをひとつ

わきに抱えてもうひとまわり

「ブッ フォッ・ブッ フォッ」

いつもの場所に、救世軍の社会鍋

そうか、もう一年が過ぎていたんだ、

今年も寄付金を社会鍋に差し入れる、

覗き込んだショウウインドウの中から

鈴の音が響く

「何処へ向かうのだろう」

笑い声を満載して白いトナカイが動き出した

振り向いたのはサンタクロースの髭オヤジ

「メリークリマス!」

冷たい夜空に舞い上がっていく後姿へ

そっと手を振った。

「旅がしたいな・・・」