源氏物語が生まれて千年が過ぎたとか、

今年こそはその源氏物語に挑戦してみようと

思い立ったが、もうすでに立春も過ぎたというのに

遅々と進まず、こうなれば思い立ったところから、

季節に合わせて読み取ってみよう、

などと適わぬ望みを願かけてみるのでございます。

まずは梅の季節に 源氏物語 『梅が枝』を・・・

梅の花 立ち寄るばかり ありしより

人のとがむる 香にぞしみぬる

古今和歌集 読人知らず

散りぬとも 香をだに残せ 梅の花

恋しき時の 思ひ出にせむ

古今和歌集 読人知らず

 色よりも 香こそあはれと 思ほゆれ

   たが袖ふれし 宿の梅ぞも

古今和歌集 読人知らず

 君ならで 誰にか見せむ 梅の花

   色をも香かをも 知る人ぞ知る

古今和歌集  紀友則

茶道や華道と並んで「香道」という芸道があるそうで、

昨日の集まりでお隣におられた和服の御婦人がその「香道」を

たしなまれるというので

いつもの好奇心からいろいろお尋ねしてしまった。

もう此のあたりでギブアップ、覚えてきたのは 

『香は聞く』ということだけでしてね。

香の聞き分けはなかなか素人には敷居が高いようなので、

それでは、日頃から嗅ぎ分けている、いや聞き分けている

梅の香を聞きに行ってみるかと、

やってきたのは何時もの鎌倉でございます。

梅が香を 袖にうつして とどめては

春はすぐとも 形見ならまし

古今和歌集 読人知らず

妙齢なご婦人に恋でもすればこんな気分も判らぬでもないが、

生憎、そのような夢の話はなし、やれやれ、

、もし雲が月を隠してしまったら

梅の香だけは聞き分けてやれるかな。

  春の夜の 闇はあやなし 梅の花

    色こそ見えね 香やは隠るる

   古今和歌集 凡河内躬恒

(瑞泉寺にて)