関東各地に広まった阿波踊り、

百万人の観客を呼ぶ町があります、そこには永い年月をかけて

続けられてきたその町の歴史が刻まれているのです、

阿波踊りといえば、まず踊り手、地方のお囃子がなければ

始まらないのですが、そこに見る人々が集まらないと

何十万人などという人々が歓喜する舞台は出来上がらない

わけですが、中には地元のわずかな連とこの町を愛しく想う

人々だけで密やかに続けられている町もあるのです。

「九月の最初の土曜日」

たったこの一言の約束で、

あの懐かしい町で今年も阿波踊りが開かれるのです、

北浦和阿波踊りはとうとう38回目を迎えた。

駅を降りればもう其処が祭り会場になる狭い商店街に

今年も見慣れた阿波踊り連が集まっています。

ここ数年は、雨空を心配しながらも無事に続けられておりましたが、

今年はどうだろうか

何十万人に観客を集めて、踊り手が数千人という阿波踊りが

あれば、地元の商店街の有志によって始められた小さな阿波踊りもある、

最近は、小さな規模の阿波踊りに惹かれているのです、

いつもの定位置で始まりを待っている楽しさは規模が大きいとか

小さいとかはあまり関係ないのですが、小さい祭りには肩が触れ合う

近さで踊る連のみなさんの息遣いまで感じられとても親近感が湧く

のですね。

鉦の音が響くと最初の連が踊り始めた、

踊りの上手さは勿論のこと、地方さんのお囃子は本当にお上手ですね、

わずか十一連の出場ですが、それぞれ個性が異なり、どの連も

眼が離せませんでした。

地元青年部を中心に結成された 北浦和阿呆連は今年38年目、

近郊の町からも、新座、南越谷、上尾からも参加され、

本場徳島の正調阿波踊りを引き継ぐ踊りも見せていだきました、

肩肘張らずに自分達のペースで祭りを続けるというのは

言うは優しいですが、いざ続けるとなると案外挫折してしまう

ものなんですね、

どうしても人を集めたくなって、規模を大きくしていこうとする

意識が強くなると、人の和が壊れていくのも人間の持つ性質なんです、

みんなが、ほどほどのところで調和が取れているというのは

よほど目配りの効く人々がいるのでしょうね。

今年も参加連は増えてはいません、でも踊る人、見る人のテンションは

全く変わらない、いやさらに盛り上がっているのは不思議ですね、

祭りは遣る人だけが奮い立っても、見る人が居なければやがて

衰退してしまうでしょう、

きっと、そのバランスが程よく保たれているのですね、

そして、38年も続いているという事実は、何事にも変えがたい

誇りなのかもしれませんね。

目の前を、子供たちが眼の色を輝かせて通り過ぎていきます、

10年後、いい青年に成長しているでしょう、

20年後、次の世代を育てているでしょう、

30年後、受け継いできた祭りが伝統になっているでしょう、

祭り とは人の一生と係わっていけるからこそ続けることが

できるのでしょうね。

今年も、笑顔を沢山いただいて元気になれた祭り旅の途中

でございます。

2016年9月記す。