日本人が2000年もの間生きてこられたのはどうしてでしょうか・・・
それは自然の中で、いかに調和しながら生き続けてきたかということに
思い至るのです。
人間は一人では決して生きられないことを真っ先に察知した古代人は
土と水の豊富にあるこの国の特長を見抜き、稲作に活路を見出したことが
この国の風土に適合したことだったのでしょうね。
この国の八割は山林です、その山林を切り開き、豊富な山の水を取り入れ
ひたすら労力をつぎ込んで米を作り続けたのです。
集落というのはある人数が揃っていないと成り立たないのです、
子孫を残すための通婚圏は80戸~100戸は必要になる、
それ以下であれば峠を越えた反対側の集落と
繋がりがなければいつかは途絶えてしまうでしょう。
私が尊敬する宮本常一先生は一生をこの国を旅することに
費やした稀有な人です。
宮本常一著『自然と日本人』の中にこんな一説があります。
『風景というのは、明らかに作るものなのです。
本当の自然というものは少ないのです。
われわれは自然だ自然だと言っておるけれど、
決してもとからの自然というものはないのです。
人間の作り出したものなのです
その人間がどういう思想を持つかでその地域の風景が
決まってくるのです』
また、こうも言っているのです。
『人間が喜ぶ自然、風景、それはそこに住む人たちが
それを造り出す以外にない、
言い換えると、そこに住んでいる人たちの心にかなったものを
作ることによっておおぜいの人の心にもかなうものが生まれて
くるのである。
それを作った人たちの生活を豊にすることが大事になるのでは
ないだろうか・・・』
いま、目の前に広がる棚田を見つめています。
なんて美しいのでしょうか、
この棚田を作り出すことできっとこの集落の人々は
豊な心を取り戻しているに違いないのです。
棚田は2000年に渡って営々と築き続けてきた日本の原風景です。
戦後たった70数年でこの国から一番美しい風景がひとつまたひとつと
消えていっています。
この風景が消えてしまう時、この国はきっと滅びてしまうでしょう、
あの殺戮に明け暮れた戦国時代でさえ、不屈の精神で作り直した
棚田の存在にもう一度目を向けなければ・・・
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