「ヨーッ!源さん 真っ赤な顔してどうしたい」

「祭りに赤い顔して悪いかよ」

「そりゃ神輿担いで陽に焼けたのかい、いや違うな

酒焼けだよ、普段から呑んでるんだから祭りの時くらい

酒断ちしたらよさそうなもんだ」

「ベラボウめ、酒の呑めねぇ祭りなんか祭りじゃねぇ」

「その顔で仁王様の前を通ってきたのかい、

よくバチが当たらないもんだ」

「チクショウ!相変わらず口の減らねぇ爺だ!」

浅草じゃ、祭りが終わった と感じるのはほんの一瞬でしてね、

もう来年の祭りのことが頭を駆け巡るというのが普通のことなので

ございますよ。

もうほろ酔いなんてものじゃない源さんに

「足元危ないからついていてあげようか、呑むなら付き合うぜ」

「いや、もうダメだ、

口の上まで酒が詰まっちまってもう一滴も入らねぇよ」

昔ならとことん呑み続けた源さんでしたが、

やっぱり歳とっちまいましたよ、

送っていくからと手を引っ張ったら、

「ヤメロ! おれは年寄りじゃねぇ」

「それだけ憎まれ口きいてりゃ

まだ大丈夫だろ、気をつけて帰るんだよ」

「じゃなあ」

と右手を上げると、ふらりふらりと歩き出す、

その後姿がやけに寂しげでね、

祭りが終わったその宵はむやみに哀しくなるものでしてね、

千鳥足の源さんの姿が小さくなっていくまでじっと見送っていたら

なんだかこっちまで気落ちしちまってね、

来年もヨッパラった源さんの後姿が見られたらいいね、

そっと見上げた東の空にスカイツリーが輝いていますぜ

こうやって時代は代わっていくんですよ、

お互いに元気でいようじゃないかね・・・・

(注意:源さんではありません、元気な頃のハト爺さん)