『会津磐梯山』  福島民謡

エイーヤー

会津磐梯山は 宝の山よ

笹に黄金が エーまた なりさがる

スッチョイ スッチョイ スッチョイナー

エイーヤー

ことしゃ豊年 穂に穂が咲いて

道の小草も エーまた 米がなる

スッチョイ スッチョイ スッチョイナー

小原庄助さん

なんで身上つぶした

朝寝 朝酒 朝湯が大好きで

それで身上つぶした

もっともだ もっともだ

久し振りの青空にすっくと立った磐梯山の

何と言う素敵な姿でしょうか。

この山に惹かれて通い続けた会津の地、

ついこの唄が口をついてしまうのです、

特に小原庄助さんの

朝寝 朝酒 朝湯が大好きで というところが

気に入ってましてね、アタシは朝酒だけは出来ませんので

身上を潰しそこなっておりますが、まあ、こうしてふらふら彷徨う

日々はもしかしらた庄助さんの上を行ってるかもしれませんがね。

驚いたことにこの民謡『会津磐梯山』はなんでも歌詞が三十番まで

あるのだそうで、まあ、陽気な曲ですから皆で輪になって踊りやすいので

しょうね。

そういえば

 会津磐梯山に振袖着せて 奈良の大仏 婿にとる

とか

 会津磐梯山はあの様に若い 湖水鏡で化粧する

さらに

 会津磐梯山は嫁入り頃よ 花の振袖雪化粧

すると、猪苗代湖から見る磐梯山は女性だったのですね。

どうりで、傍によると気も漫ろになるわけですよ。

磐梯山はすっかり秋色に染まっています、

さあ、あの懐へ飛び込んでいきましょう、

右に左にハンドルを切るたびにその美しい姿で微笑んでくれているようです。

山湖台で猪苗代湖に別れを告げると少しずつ高度を上げていく、

どうやら夕暮れを迎える時間から上り始める車は無いらしい、

紅に染まった谷間から瀧の音だけが風に乗って耳元に届くだけ、

何と言う静けさだろうか

急ぐ旅ではない、今夜はこの森の小さなホテルにでも泊まろうか

会津の森の美しさはもしかしたら一人でやって来た者にだけ

心を開いてくれるのだろうか、

峠の広場で休んでいると、熊よけの鈴の音が近づいてくる、

もうバスのない時間である、

「どうしました、もうこの時間ではバスはありませんよ」

「少し道に迷ってしまって・・・」

疲れ切った顔に安堵の色が浮かぶ、

団塊世代のご夫妻を乗せて夕暮れの山道を会津の街を目指して

下り始める、

よほど疲れてしまったのだろう、猪苗代の駅についても

すっかり眠ってしまっておりました。

「どうぞ無理をなさらないでくださいね」

何度も何度も頭を下げたご夫妻が上りのホームに消えたのを確認すると

これから夜道を森の中のホテルへ行くには冒険過ぎると思いなおし、

磐梯熱海の温泉を目指す、

夕湯なら身上を潰すことはないだろうな・・・。

夕闇に磐梯山の姿が消えていく旅の途中です。