いつのまにか雨が温かく感じます

そうか啓蟄も過ぎたんだね、

山里はまだ冬かもしれないが、

東京はもうまもなく桜に覆われる季節

春が来たと感じるのは人だけではないのです。

忘れていたわけではないけれど、

気付かれずにそっと咲いては散り行く

早春の花のあることを

追われる日々とともに見過ごしてしまう。

(山茱萸)

白木蓮、辛夷は今が盛りと舞い

遅咲きの梅は春は香りで感じるものと

雨の中でもそっと微笑む

山茱萸が小さな雨粒に微かに揺れる

三椏はその甘い香りで春を満喫させているよ

(三椏)

それでも春の雨は視線を下に向けさせてくれる

まるで、ほらそこにもなごりの花が咲いているよ

と教えてくれるようにさし掛けた傘に

冬の足音を残していく

(うずのしゅげ(翁草))

うずくまらないと気付かないほどの可憐な花は

それでも健気な表情を真っ直ぐに向けてくる

「忘れてはいなかったよ」

とつぶらな花を咲かせた翁草にそっと呟く、

この花を見つけるたびに、宮沢賢治の

「うずのしゅげを知ってますか。」が

浮かんできます。

(ヒマラヤユキノシタ)

桜が咲いたらきっと見向きもされなくなる花たちへ

もう一度振り向いて 

「ありがとう、生きていたらまた逢おうね」