それでなくても冷たい街が凍りついてるよ、

人が大勢歩いてるからって

ちっとも温かくないじゃないか

だって誰も顔見知りじゃないし

行列しているけれど会話もないし

だから笑顔もないだろう、

黙々と歩いて笑っていたら、それこそ

みんな避けていくだろうしね、

ほら、あそこでもやってるじゃないか

片手にスマホ持って、歩きながら黙々とメール打ち

メールの相手が沢山いるから

孤独じゃないって言うんだよ

見えない相手に盛んに媚を売るってわけ

昔じゃ、女郎さんの専売だったけど

今じゃ素人の娘さんが同じことやってるんだってさ

街が冷たすぎるからなのかね

それとも、独りでいることに馴れすぎてしまったのかね

そんなに頑なに自分の殻の中に閉じこもって

何処へ行こうっていうのさ

「私に声を掛けないで」って

きっとあの携帯から電波を発信してるとしか思えないよね

昔を懐かしむのは年寄りの習性だけれど

あんな寂しそうな娘がいたら、ほっとかなかったけどな

「どうしたのさ、寒いのかい、

顔が引きつってるよ、お茶でも飲もうか」

ってね、

ほらその娘に話しかけてごらん、

無言で110番掛けられるに決まってるよ

目がそう云ってるもの

そうやって、みんな孤独の仮面を

何気ないフリの代わりに身につけることを

覚えてしまったんだ、

だから、此の街ではみんな黙って歩くのが

当たり前の街になってしまったんだよ

人間なんて中身は昔も今も大して

変わっちゃいないと思うけどな

いつから無表情のまま街を歩くようになったんだろう、

不景気だからなんて思いたくないよね、

本当に誰とも関わり合いたくなかったら、

此の街から誰も居なくなるはずなのに

相変わらず、人が大勢歩くのだから、きっと孤独は嫌だと

想っていることだけは確かなんだろうけど・・・