二十四節気の小満なのだからもう十分夏なのです、

しかし、カレンダーは五月、感覚としてはまだ夏という

気はしない、うっとおしい梅雨が明けてギラギラと太陽が

光り輝かなくては夏じゃないですよね。

ところが、いきなり気温三十度なんていうと、

まだ身体の方は夏の支度が出来ちゃいませんよ、

歩き出した途端に汗が噴き出してくる。

「やれやれ、どこか日陰を探さないと

    爺の干物が出来上がっちまう」

空を見上げれば、目がくらみそうな日差しに逃げ込んだのは

緑の林の中、

その林の中に身を置けば通り抜ける風が涼しく感じるのです。

あのビルの中のクーラーの冷気とは一線を画す涼やかさですよ、

昔から、日本人は一日の昼の長い夏の季節は旅をするには時間を有効に

使えるのですから旅を十分楽しめたのでしょうね、

それでも、太陽の直射日光は時には命を取られかねない危険な要素

だったでしょうね。

そんな夏の旅に無くてはならなかったものとは、

そう、日陰ですよ、街道筋には並木道が作られれ、その木の下は

絶好の日陰道になるわけで、小川に浸した手ぬぐいで汗を拭きながら

ひと休みした日陰道は身体を労わることのできる自然のクーラー

だったわけですよ。l

ひと休みしながらひょいと見上げた先には ウツギやエゴの真っ白な花が

咲いていたでしょうね。

現代人は、クーラーというただ冷気だけを吐き出す機械に身体を慣らされて

汗をかくことをしなくなったために、汗で体温調整をする機能を失って

しまったのではないですかね、簡単に熱射病で倒れてしまうのは

身体から汗腺を退化させてしまった現代人の宿命じゃないですね。

そのクーラーから吐き出す熱風はこの国の夏の温度を確実に

押し上げているのですよ。

多分、クーラーに慣らされた身体は、日陰で味わう涼やか風さえも

受け入れることはできないでしょうね。

折角残された自然の宝庫は大切にしなければバチがあたりますよ、

それにしても歩いてる方はほとんどおりませんですよ、

きっと、TVのニュースが

「熱射病に注意を!」というアナウンスに敏感に反応した人々は

部屋の窓を閉め切り、クーラーのSWを押して部屋の中から一歩も

出なくなるのです。

汗をかくことで自然の中に佇むことができることを諦めた人々が

こうして自然の中から姿を消していく。

今年の夏は、きっと静かな夏かも・・・