観音様のご縁日は毎月18日なのですが、

その日とは別に月に一度功徳日という縁日が

室町時代頃始まりましてね、この日にお参りすると

百日分、いや千日分の利益(功徳)がいただける

というので、特に浅草観音では押すな押すなの人で埋ったとか、

中でも7月10日は特別に四万六千日分のご利益が

あると江戸の頃より何時の間にか信じられるように

なりましてね、それが今に続く「四万六千日」の功徳日

なのです。

この「四万六千日」は何も浅草観音の専売では

ありませんでね、ひと月遅れの8月10日には、

鎌倉の観音様をお祀りする観音札所でもある

杉本観音、田代観音(安養院)、長谷観音、

そして逗子の岩殿観音を巡る四万六千日の観音巡りが

今も行われているのです。

今年は浅草の「四万六千日」に参拝をしなかったので、

鎌倉を巡るかと思えど、すでに ぼんぼり祭りで二日連続の

鎌倉詣でをしており、ぶり返した炎天の陽ざしに恐れを

なし、本日の鎌倉行きはご辞退いたしました。

そんな時、隣町松戸でも「四万六千日」が行われているとの

ご教授をいただき、これは近くていいと日の暮れるのを待って

さっそく出かけます。

松戸の「四万六千日」は松龍寺境内の「すくも観音」をお参り

するのが昔からの信仰だというので、その松龍寺を訪ねますと

ものすごい人波にびっくり、そんなに功徳があるのかと

ずらりと並んだ列の後ろへ着くこと20分、たどりつくと

そこは名物のとうもろこし売りだったんです。

そういえば、昔から観音様に参拝すると雷様も退散すると

信じられていたのですよ、おまけに雷様は赤色が嫌いというので

赤いほうずきや、昔は赤かったとうもろこしが売られるように

なったのだと、列に並んでいるうちにいろいろ教えていただきましたよ。

焼きとうもろこしをかじり、無事「すくも観音」様をお参り

して戻りかけると、一天にわかに掻き曇りバケツをひっくり返したような

夕立にみんな軒下に雨宿り、

こうして見知らぬ同士が雨の止むまでの四方山話しに華が咲く

のでありますよ、もしかしたらこれも功徳かもしれませんな。

目の前の坂川辺りで人が立ち止まっておりましてね、

「何があるのですか」

「灯籠流しですよ」

この人出がやっとわかりました、

この日は「四万六千日」だけではなく

江戸時代、水運と宿場で栄えた松戸宿の繁栄を

もたらせてくれた先人たちへの感謝と

自然のめぐみをもたらせた川への感謝をこめて、

献灯を復活させたとのこと。

名も「松戸宿坂川献灯まつり」として。

勿論、今年も水害、地震と多くの方々が命をおとされました、

夫々の想いを記した灯籠が坂川に浮かびます。

そっと手を合わせて流された灯籠は、夕焼けを写す川面を静かに

漂い始めます。

若い二人の青年が、胸まであるゴム長を履いて川の中へ

入っていきます。

灯籠の流れを妨げる浮き草をそっと掃う仕草、

自分にできることでまつりに参加していく若者のその姿に

とても感動させられた祭り旅の途中のことでございます。