(歌川広重 名所江戸百景
 「王子装束ゑの木大晦日の狐火」)

大晦日の夜、社に近い榎の下に関東八ケ国から

続々と集まった狐は、

この榎の元で衣裳を整えて王子稲荷社に参上したと

いいます。

近在近郷の農家では、狐がともす狐火の量で、

新年の豊凶を占ったと言い伝えられておりますよ。

さてと、本日は如月の初午でございます。

こうして毎年欠かさずお参りしていると、

一度でも行けない年があると

なんだか申し訳ない気になるものでしてね。

そういえば一昨年は雪の中のお参りでしたね、

昨年は浅草吉原の初午祭に参加いたしましたので、

王子詣でが抜けてしまいましてね、

続けていたお参りが途切れると、どうも気になって

仕方ないのですよ。

さてと今年はお天気にも恵まれたようです、

日曜日と重なって多分、大勢の善男善女が集まる

はずでございます。

今年は、ちょいとお参りのやり方を変えましてね、

関東一円から集まってくるお狐さまたちは一度、

装束榎の元に集まるといわれておりますので、

アタシもまずはその装束榎、実はもうその榎は

ございませんで、いまはその跡地に装束稲荷神社が

鎮座されておりますのでまずはそちらへ、

こちらの装束稲荷神社でも火防の凧をお授け

いただけるというので、まずは所望いたしました。

こちらで身なりを整えて、いざ王子稲荷神社へ向かうと

いたしますか、

通いなれた小路の両側は露店が並びいい雰囲気でありますな。

ところがその人の流れが途中で止まりましてね、

「ココがお参りの最終尾です」

やれやれここからじゃ一時間は有にかかりそうですな。

周りの出店を冷やかしながら、やっとたどり着いた本殿で

まずはある方の代参を済ませ、ついでにアタシの旅の無事を

お願いしていつもの火防凧を所望、

「よくお参りくださいました」

と相も変らぬ可愛い巫女さんの笑顔つきで奴凧を押し頂き

清々しい気分で参道を戻れば、まだまだ行列は続いておりますよ。

こっちは、装束稲荷でいただいた火防凧と

本家王子稲荷の奴凧を両手に今年も無事参拝できました

ことを感謝しながら、

ひょいと露店商のオヤジさんと眼が合っちまいましてね、

「旦那、こっちの凧も効き目ありますぜ」

どうやら口元が絞まり無かったようで、

「これも何かの縁だから貰っていくわ」

とうとう今年は三つの凧を抱えての初午でございます。

信心篤き者は活き活きと生きていけるのでございますよ。

ああ、日本人でヨカッイタ ヨカッタ!

(2017年の初午、今年は立春と初午が重なりましたよ)