桜が咲いたといっては訪ね、夏の土用だといっては鰻を目指し、

秋には見事な山車祭りを見に行くとどんな季節に訪ねても暖かく迎えて

くれる街なんですよ川越は、

なるほど冬の川越はまさに 閉塞成冬(そら さむく ふゆとなる)

でありますな。

蔵造りの街並みが薄闇に沈んでいく瞬間の美しさは得も言われぬもので

ありますよ。ところが見ると歩くとはこれまた大違いで、

寒さが東京とはまるで違いますよ、ひとりのんびり歩くなんて気分とは

大違い、手を擦り、顔をマフラーで隠し急ぎ足で路地から路地へ、

うーん、やっぱり寒くてそぞろ歩きは無理ですよ、

こうなれば、今年一年駈けずり廻った末に感じてきた体力の衰えを

補填するかとすぐに方向転換、

「体力が落ちた時は・・・そうだ鰻だ」

もう何度もお邪魔している馴染みの店へ、

「いつもの鰻重お願いね」

夏痩せに効くという鰻なら、冬の体力低下にだって効き目は

ありますぜ、

「旨い!」

身も心も温まって店を出れば空には十六夜の月かな。