祭り行脚の旅から戻ると、暑さに疲弊した身体を

クールダウンしなければ、だってね、夏のお祭りを

駆け巡るのは格闘技をやってるようなものですよ、

一番心がホッとする浅草で、のんびり散歩と思いきや

ぶり返した暑さが35度ですよ、そんなに暑さの連鎖を

押し付けてこなくてもよさそうなものじゃないですか。

これは、しばらく観音様に御参りしなかったので、

「たまにはこっちをお向きなさい」 ということかも

しれませんですよ。

それにしても、どうなってるのですかこの暑さ、

顔なじみのお姐さんにぼやいたら、

「大暑だもの暑いに決まってるじゃないのさ」

そうか、大暑でしたか、

そう聞いただけで、また汗が噴出しましたよ、

観音様に手を合わせて、旅の無事のお礼を申し上げて

辺りを見回したら、浅草にしては人出が少ないですね、

そりゃそうですよ、誰だってこの暑さの中、ふらふら歩くなんて

したくないですよね。

こういう暑い日は、浅草じゃ昔から打ち水って方法が涼を呼ぶことを

みんな知ってるんですよ、

葦簀張りを日除けにして、店の前には打ち水、風鈴のひとつも下げれば

ほら、涼しく感じるじゃないですか、

気の持ちようで暑さ凌げる というのは、本当のことなんですよ。

そういえば、7月初めの猛暑が続いた日に、夕立がものすごい勢いで

降った日がありましたでしょ、雨が上がったら、気温が10度も

下がったんですから打ち水だって、効果ありますよ。

そうだ、雷様にひとつお願いしてこよう、

「えーっ、みんな暑さで死にそうでございます、ここはひとつ

 雷様に一肌脱いでいただいて、て、そういえば、虎皮の褌ひとつで

 ございましたな、ちょいと一雨お願いいたしますよ、ああ、そんなに

 意気込まなくて、ほんの一時の夕立をどうぞお願いいたします。」

いやいや、雷様がものすごい形相で張りきっっちまいましたよ、

あっ、黒雲が・・・

うわっ!こりゃバケツじゃなくて、タライをひっくり返したんじゃ

ないですかね、

傘なんて役立たない土砂降り、

浅草の雷様の威力はどうです、

そうか、あの四万六千日に、浅草寺で雷除けの護符をお配り

いただけるのですが、

軒下をお借りしている都合上、

雷様もおとなしくなさっていたのですね、

それにしても、相当ストレスが溜まっていたんですな、

あの暴れ方は尋常じゃありませんですものね。

それでも、お陰さまで一気に涼しくなりました。

暑いより、涼しいほうがいいですものね。

アタシもついお調子にのって、

見得のひとつも切りたくなりました。

 知らざあ言って聞かせやしょう。

 浅草のかみなりさんは、ちょいと見た目は可愛らしいが、

 ひとたびいきり立つと、誰が止めてもとまりゃしない、

 冗談にも、雨を降らせろなんて 口が裂けても言っちゃならないよ

 静かにそっとしとくこった、それが平和というもんさね」

さてと、蕎麦でも啜ってまいりますかね。