(武蔵国 鷲宮神社)

 謹んで新年のお喜びを申し上げます。

一年の計は元旦にあり と申します

今年は抜けるような青空の下、穏やかな光につつまれて

始まりました。

もうこれだけでいい年になりそうな気分でございます。

今年も歩き続けるためには神様のご加護をいただかないと

老いた身にはまさに神頼みが必携なのでございますよ、

ここ三年ほどは、年に百箇所を上回る祭りを訪ね歩いて

おりましたお陰で寝込むこともなく元気に乗り切れたのも

神様をお訪ねしてきたことによると感じておりましてね。

江戸の祭りに欠かせないのが江戸里神楽、

若いヒトには単調でさらに黙劇仕立てなので、内容がさっぱり

判らないのですが、各地のお祭で何度も拝見してくると、

日本人が何を大切に生きてきたのかが見えてくるのです。

その江戸里神楽の源流を求めると、関東最古の神社である

鷲宮神社 土師一流催馬楽神楽 に行き着くのです。

一昨年の正月 『歳旦祭』に参拝して、その不思議な神楽に

すっかり魅せられてしまいましてね、

今年はこの 奉納 土師一流催馬楽神楽をこの眼で見てみたい

との一念で東武電車に揺られてやってまいりました鷲宮神社

でございます。

「崇神天皇の時代に河内国から東国へ移住した土師氏が下総国浅草から

利根川を上って当地に移住した際に先祖を祀ったのが起源ではないか」

と言われるほどの古社でありながら、最近はあるアニメの主人公の実家が

神主さんで、ここ鷲宮神社がその聖地なのだと喧伝されてからは、

全国からアニメ好きの若者達が続々と集まってくるようになり、

今では神社にしては珍しい若者達が、アニメの衣装を身に着けて

続々と集まるという不思議な様相を醸し出しているのです。

何もアニメや漫画から火がついて人気沸騰した減少は今に始まった

訳ではありませんでね、

(端神楽)

江戸時代の平穏な時代が続くと、絵草子や絵暦に誘発されて、

神社仏閣に大勢の人々が押し寄せたなんていう歴史が繰り返され

ていたのですから奇異な眼で見ることはないのかもしれません。

最古の神社でありながら、新しいアニメさえも取り入れてヒトを

集めるというやり方はあっても不思議はないのかもしれませんですよ。

その一方で、数百年にわたって神楽舞を保存し続けることも伝承されて

いるのですからこちらの神様はお心が広いのではないですかね。

(第十座 翁三神舞楽之段)

(催馬楽を詠う翁神)

真夜中から舞い続けられてきた神楽はすでに十二座のうち残る三座のうち

第十座、翁三神舞楽之段が始まりました。

面をつけた三神が舞台に登場、

翁、千歳、三番叟なのでしょうか、それぞれ扇(三番叟は日の丸扇)を

持って舞います。

江戸里神楽では何度も拝見している三筒男神の原型なのでしょうか。

説明によると

武学に通じ、いかに世の中が平和であっても、どんな悪人が陰謀を企てる

かもしれない、このような平和な時こそ武学が大切であるということを

教えている舞なのだそうです。

(三番叟)

(千歳)

三神が車座になって座ると、翁が催馬楽を詠う

「喜びの舞なれば 一舞舞おう

  おうさえおうさえおうという

    おさおさおう

 千歳や ちとせの 千歳や

      万歳や 万代の 万歳や」

江戸里神楽では表筒男命、中筒男命、底筒男命という住吉三神として

舞うのですが、ここでは、

 表筒男命が翁、中筒男命が千歳、底筒男命が三番叟という役のようですね。

鷲宮 催馬楽神楽はかつては36座あったといわれておりましたが、今は

12座が残されているとのこと、

三年通ってやっと半分の6座を拝見することができました、なんとか生きて

いるうちに残る6座も拝見したいものでございます。

本日はこのあと、すでに何度か拝見している

第五座、岩戸照開諸神大喜之段

第六座、八州起源浮橋事之段

を無事拝見して鷲宮神社の破魔矢とお札をいただき境内を後に

いたします。

今年も祭りに明け暮れしそうな年の始めの旅の途中でございます。

(第五座、岩戸照開諸神大喜之段)

(第六座、八州起源浮橋事之段)

あれから4年目の元旦でございます。