冬の嵐が北国で暴れまわっている、

大雪をもたらした雪雲は、越後山脈を越えると

冷たい空っ風となって関東平野に吹き下りてくる、

しかし、陽射しはまだ秋の残り火のように明かりを振りまいている、

「これなら、旅が出来そうだな・・・」

それでも、北国には足は向かない、

「少しでも暖かいところがいいな」

東京から近間の房総半島ならマフラー巻いただけで、

てコートなしの旅ができるだろう

と、いつもなら車のハンドルを握るのですが、列車の旅に

心が動いておりましてね。

暖房の効いた列車内は日差しも受けてなんとも心地のよい

旅の始まりです。

ローカル線を乗り継いでその房総半島を横断する旅もいいかもしれない

まあ、旅のきっかけはこの程度単純な動機がいいのですよ。

五井駅で途中何処でも乗り降り自由という 一日フリー乗車券を手に

小湊鉄道に乗る。

横揺れの激しい列車は、昭和を思い出させてくれるディーゼルの旧式列車、

窓の外を眺めはもう秋を通り過ぎている、

いくつかの駅に止まる度に、降りようかと扉が開くたびに、寒風が

吹き込んでくる。

「次にしよう」

とガラガラの室内へ戻ってしまう。

これではただ子供のように列車の窓から外を見ているだけの旅に

なりそうですよ、

「よし、次で降りてみよう」

列車がブレーキの音を響かせて止まったのは「馬立駅」、

降りた客は、二人だけ、

厚手のコートを着た老人は、慣れた仕草で改札を出て行ってしまった。

改札といったって、駅員が居るわけじゃない、次の列車は一時間後、

駅の周りを歩いてみたが、店ひとつあるわけじゃなく、

枯れ草色の畑が広がっているばかり。

あまりの寒さに、駅に戻って風をよける、

待合室のベンチで本を読む、いつだったか古書店で見つけた

 田山花袋著 「東京近郊 一日の行楽」

田山花袋先生も無類の旅好きで、紀行文が面白いのですよ。

夢中で読書に励んでいると、ブレーキの軋む音に、慌てて列車に乗り込む、

なにしろ、駅のアナウンスも、誘導してくれる駅員も居ないのですから

全部、自分の行動は自分で決めなければならないのですよ。

実に旅の醍醐味を味わえる列車旅でございますな。

さて、次は・・・

経路を見ていると見つけたのは「上総牛久駅」、

上総牛久といえば、夏になると関東で一、二を競うほどの高温の地ですよ、

どんな町だろうと颯爽と降りてみました、

なかなか味わいのある商店街はまるで昭和がそのまま続いているかのよう

です、見つけたそば屋さんで腹ごしらえ、

駅に戻るとなんと二時間列車が来ないのですよ。

「別に急ぐ旅でもないし・・・」

と線路に沿って続く道を歩き始めましてね、

田山花袋先生の時代は、ほとんど徒歩の旅だったことを思えば、

どうってこたぁありませんよ、と、自らを励ましながらの野の道は、

どちらを見ても冬景色、

歩いているお陰で、身体はぽかぽか温かくなりましたが、

あっち寄り、コッチ寄りしていると二時間などは

あっという間なんですね。

北風が波紋を残す高滝湖を横目にみながら高滝駅へ着いた時には、

さすがに身も心もヘトヘトでございますよ。

再び列車に乗り込み、上総中野駅へ、

ココからは いすみ鉄道の旅、

菜の花色の列車は一足早く春の風情、

しかし外の景色は相変わらず冬のまま、大原まで14駅を

ひとつひとつ丁寧に止まっていく、

途中の大多喜駅で楽しげなポスター、

 列車に乗りながらゆっくりとお食事を

 伊勢海老特急 イタリアンコース

 伊勢海老特急 お刺身列車コース

なるほど、面白い企画があるものですね。

それも、予約出なければ味わえないとのこと、アタシのように

その時に気分でふらりと旅する者には無理かもしれませんね。

さてと次はどこで降りてみようかな・・・