(浅草石濱神社のおかめ桜)

♪ちょうちょう ちょうちょう 

 菜の葉にとまれ

 菜の葉にあいたら 桜にとまれ

 桜の花の 花から花へ

 とまれよ遊べ 遊べよとまれ

桜の咲き始めた春のアタシはまさにこの歌の蝶々みたいなもの、

散歩をしても、花を見つけると 「あっ、さ・く・ら!!」

花が咲かないとまったく気づかないのも さくらなんです、

いつものように隅田川の辺を歩いていると、神社の境内に見つけたのは

まだ若い桜でした。

近寄って眺めると、初めて見る桜なんです、

「これ、なんという桜なんだろうか」

早速、社務所に尋ねると、

「石濱神社神明会発足三十周年を記念して七年前に植樹した桜で

『おかめ桜』というのですよ」

はて、『おかめ桜』とは・・・

アタシの桜の記憶の中にはそんな名の桜はありません。

早速、図書館に行って調べてみました。

(根府川星ケ山)

学名:Prunus campanulata x Prunus incisa'Okame'
タイプ:バラ科の耐寒性落葉低木
樹形:広卵状
花形:一重咲
花の大きさ:小輪
花色:紫紅
開花期:3月下旬~4月上旬

確かにおかめ桜はありました、

寒緋桜と豆桜の交配種で、それもイギリスで交配された新種の桜なんですね、

それにしても、なんで おかめ なんですかね・・・

花は小さく色は濃い目で下向きに咲く辺りは楚々としているのですよ、

『乙女桜』とか『小町桜』なんて名にしていたらとつい想ってしまいますよ。

さて、そのおかめ桜を山の中に咲かせている場所があると聞いて

早速、鬼姫様をお誘いして訪ねてみました。

「さくらを見にいきませんか」

「あら、桜はまだ咲いてませんでしょ」

「いえ、おかめ桜が満開だそうです」

どうも、おかめが引っかかりますね、

そのおかめを省略して可憐な桜だそうですよ と名前を濁して出かけます。

海を目の前にしてみかん畑の中を向かった先は 根府川の星ケ山、

渓谷の瀬音が微かに響く静寂の山の中に名前とはうらはらで

山の中で出会うと、まるで霞のような儚げな姿、

「まあ、かわいい桜だこと、なんという桜ですの」

「おかめ桜というのだそうですよ」

「お・か・め ですか、なんだか桜が気の毒になる名ですわね」

きっとイギリスの人が、誰かに、日本の美人の名はと聞いた時に、

もしかしたら、それはおかめさんです と教えられたですかね。

桜の華やかさとは対極にある桜かもしれませんね、

それでも春浅い山の中で、梅の花と一緒に咲いていると

「ああ、春がやってきたね」

なんてしみじみ感じるにはいいかもしれません。

花の名前は、地域によって千差万別、同じ花が百通りの名を

つけられていたりするのですから、このおかめさんも

早乙女桜とか、桜小町なんていうのはいかがですかね、

待てよ、昔、アジサイに芸者さんの名前をつけた外国人がおりましたっけね、

まあ、花の名前を聞いただけで、にっこりできるような名が

一番ふさわしいかもしれませんがね。