武蔵国鷲宮神社『歳旦祭』

 奉納 土師一流催馬楽神楽

一月一日午前0時より3時まで

第一座、天照国照太祝詞神詠之段

第二座、天心一貫本末神楽歌催馬楽之段

第七座、大道神宝三種神器事之段

第十二座、天神地祇感応納受之段

第四座、降臨御先猿田彦鈿女之段

第三座、浦安四方之国固之段

一月一日昼11時より3時まで

第六座、八州起源浮橋事之段

 端神楽

第八座、祓除清浄杓大麻之段

第九座、五穀最上国家経営之段

 端神楽

第十座、翁三神舞楽之段

 端神楽

第五座、岩戸照開諸神大喜之段

 端神楽

第十一座、鎮悪神発弓靭負之段 

江戸の祭りに欠かせないのが江戸里神楽、

若いヒトには単調でさらに黙劇仕立てなので、内容がさっぱり

判らないのですが、各地のお祭で何度も拝見してくると、

日本人が何を大切に生きてきたのかが見えてくるのです。

その江戸里神楽の源流を求めると、関東最古の神社である

鷲宮神社 土師一流催馬楽神楽 に行き着くのです。

昨年の正月 『歳旦祭』に参拝して、その不思議な神楽に

すっかり魅せられてしまいましてね、

 一年の計は元旦にあり というからには、何が何でも元旦に

奉納 土師一流催馬楽神楽をこの眼で見てみたいとの一念で

今年もやってまいりました鷲宮神社でございます。

「崇神天皇の時代に河内国から東国へ移住した土師氏が下総国浅草から

利根川を上って当地に移住した際に先祖を祀ったのが起源ではないか」

と言われるほどの古社でありながら、最近はあるアニメの主人公の実家が

神主さんで、ここ鷲宮神社がその聖地なのだと喧伝されてからは、

全国からアニメ好きの若者達が続々と集まってくるようになり、

今では神社にしては珍しい若者達が、アニメの衣装を身に着けて

続々と集まるという不思議な様相を醸し出しているのです。

何もアニメや漫画から火がついて人気沸騰した減少は今に始まった

訳ではありませんでね、

(端神楽)

江戸時代の平穏な時代が続くと、絵草子や絵暦に誘発されて、

神社仏閣に大勢の人々が押し寄せたなんていう歴史が繰り返され

ていたのですから奇異な眼で見ることはないのかもしれません。

最古の神社でありながら、新しいアニメさえも取り入れてヒトを

集めるというやり方はあっても不思議はないのかもしれませんですよ。

その一方で、数百年にわたって神楽舞を保存し続けることも伝承されて

いるのですからこちらの神様はお心が広いのではないですかね。

大行列の最後尾から参拝するまで一時間待ち、やっとのことで御参りを

済ませると、年が明けてから延々と続けられてきた奉納神楽も最後の

一幕を残すのみとなってしまいました。

たとえ一幕でもこの眼で見られれば願いが叶ったも同然でございます。

素面の巫女姿の少女による端神楽(はかぐら)が始まる、

右手に鈴、左手に白弊を持ちながら舞台の四隅を祓いながら舞う、

どうやら、前の出し物の残影を消し去り、新たな神を迎えるための

祓いの儀式のようにも見える舞いですね。

真夜中から舞い続けられてきた神楽はすでに十二座のうち残る一座のみ

となっておりました。

 第十一座 鎮悪神発弓靭負之段(ちんあくじんはっきゅううつぼのまい)

大拍子、太鼓、笛の音が響くと、面をつけた右大臣、左大臣が弓矢、

鈴をもって舞います。

どうやら悪霊を降伏させる神楽のようで、舞台の床を力強く踏みしめる

舞いが眼を引きます。

手にする弓は、天照大神が下界を鎮める際に諸神に与えた弓矢の

ことをいうそうで、題材は

「須佐之男命が天照大神に会おうとした時、大神は須佐之男命の

 悪い心を見抜き、女神ながら男神に装い、多くの矢が入る靱を

 背負い対面した」という神話に基づいているのでしょう。

十数時間に渡る奉納神楽はこの第十一座をもって終了するのでした。

舞い人の所作、面、衣装、弓、太刀等、どれをとっても神に捧げるに

ふさわしいものでした、

これで十二座のうち三座を見ることができました、

今年は、2月14日  年越祭

    4月10日  春季祭

    7月31日  夏越祭

    10月10日  秋季祭

    12月初酉日 大酉祭

に奉納神楽が舞われるとのこと、きっと何度かこの舞殿をたずねることに

なるでしょうね。

祭りとは壮大な人間ドラマそのもでございます。