霧雨が頬に掛かる冷たい日の夕間暮れ

どこまで続いているのだろう と

桜並木の下を歩いています。

満開の桜です

でも、ほとんど人の姿が無いのです、

やっと見かけた散歩のお二人にお訊ねした、

「どこまで続いているのですか」

「さあ、最後まで行ったことがないので・・・」

「そうですか、それでは歩いてみます」

此処は小貝川の辺りのはず、

あの暴れ川の異名を持つ川にもこんなに

優しい姿を見せることがあるのですね。

途中で 川の一里塚 なる碑の前でしばし佇む、

利根川合流点より30km地点らしい、

再び歩き出す、

こんなに静かで、誰もいない満開の桜並木の下を

歩くのは初めてです。

南に歩いてた後、今度は北へ向かって歩き続けます、

人生ではじめての経験なんですよ、

満開の桜の下をたったひとりでこんなに長く歩くのはね。

正面からやってくるのは冷たい北風です

震え上がるほど冷たい風に、桜も身をすぼめてしまって

いるみたいです。

なんだかこのまま歩き続けると、桜に取り込まれそうな気に

なってしまいそうです。

桜は楽しいと思っておりましたのに、こんな冷たさを感じさせる

ことがあるのですね。

散り始めてでもくれたら少しは変化を感じるでしょうに、

全く感情を出さない桜は美しさを通り越して怖さが迫ってくるのです。

何処まで続くか見届けようと思っていたのに、ピタリと足が止まった。

桜の正体を見届けるなどやってはいけないのですよ、

誰かが言ってたじゃないですか、

「さくらには果てがないのだ」 と・・・

上野や墨田堤の桜の下では絶対に感じられない桜の魂に

触れてしまったのでしょうか、

桜に背を向けると振り返ることなくその場を後にしたのは

言うまでもないことですよ。

 「さくらは美しいだけではなかった・・・」