貞観年間(859~877)に慈覚大師が須佐之男命を

郷土の守護神として迎えたことに始まるという

牛嶋神社の御鎮座千百六十年大祭が始まりました。

今年は五年に一度の御鳳輦巡行が行われるというので

さっそく馳せ参じました。

が、神社はいたってのんびりとした空気が流れておりましてね、

神様の御霊は御鳳輦に移されすでに今朝御出輦された後で、

今はどのあたりを御巡幸されているのか皆目見当が

つきませんですよ。

折角ですから、お参りを済ませ、例の撫で牛の頭の辺りを

撫で回し、「物忘れが激しくなりませんように」と

お願いするのでございます。

何しろこちらの牛島様の氏子町内は五十ケ町といわれ、

鳳輦巡行も二日に分けて行われるほど広いのでありましてね、

いくら涼しくなったからといって御鳳輦の後ろを付いて歩いたら、

きっと倒れるに違いないと、追従はご遠慮させていただきました。

まずは宮元町会をお訪ねして、三十二番の神輿を拝ませて

いただきました、連合渡御では五十基の町内神輿が練り歩く

姿はそれはさおれは見事なものでありますよ。

五年毎の大祭とは、影も形も無かった東京スカイツリーが

鳥居の向こうに聳え建ち、変わらない下町にも

新しい時代の幕開けのような気がしてまいりました。

空を見上げれば、暑い暑いと言い続けた夏もそろそろ終わりですよ、

ほら、うろこ雲が秋を運んできています。

本日は神様は本所二丁目の牛島神社若宮にて一晩過ごされ、

明日の朝再び向島の本社へ向けて御出輦されるので、

先回りして本所界隈でお迎えしようと路地から路地を

聞き耳たてていると

「ドーン、ドーン!」と大太鼓の音が・・・

黒牛に曳かれた御鳳輦の姿が氏子町内を隈なく廻れておりますよ。

稚児さんたちも御鳳輦の後ろをしっかり歩いています。

五年後、さらに十年後、大祭が行われるたびにこの日のことを

思い出すでしょうね。

若宮へやってきたご一行にみなさんの労いの言葉

「アリガトウゴザイマス!」

真っ先に若宮から顔を出したのは、撫で牛ではなく本物の黒牛、

本祭りには東北相馬から運ばれてきた黒牛は神牛として

鳳輦を曳いていくのですが、

あの大震災で牛を育てている農家が被災、前回は滋賀県大津から

やって来た黒牛(葵祭りで活躍している)

が見事にその勤めを果たしてくれました。

今回は京都からやってきてくれた黒牛です。

さすがに十八キロを歩きとおした神幸祭ご一行、

猿田彦様も面をとれば、もう流れる汗で

ぐしゃぐしゃでございます。

「本当にご苦労様でございます」

何だか途中の御巡幸を観ずに、お旅所の鳳輦だけを拝ませていただく

というのも何だか気がひけましたが、古式に則ったそのお姿に

思わず手を合わせるのでございます。

こうして一日目の鳳輦氏子町内御巡幸も無事納まりました。

神様には一晩ゆっくりとしていただき、身近にいらした町内では

その神様へ、奉納踊りが始まるのです。

その町内の櫓の上に灯りの点ったスカイツリーが頭を出しておりました、

なんだか神様を見下ろすスカイツリーがちょっぴり違和感を感じたのは

アタシが古い人間だからでしょうかね。

さて、明日に備えてアタシも早寝いたしますかね。