明治維新でこの国は変わった、果たしてどう変わった

のだろうか、

西洋文化がまるで洪水のように押し寄せてきたその中で、

変わらずにいることなどできることではない と

誰もが思わされてしまった。

明治150年、大正106年、昭和92年、そして平成も29年目の秋が

変わることなくやって来た。

鎌倉の長月九月は祭り月、

 9月14日 鶴岡八幡宮 宵宮祭
 9月15日 鶴岡八幡宮 例大祭 神幸祭
 9月16日 鶴岡八幡宮 流鏑馬神事

 9月18日 御霊神社  鎌倉神楽 面掛行列

鶴岡八幡宮の一番大切な例大祭に気をとられて

つい見過ごしてしまうのが

長谷の鎮守 甘縄神明宮の祭礼なのです、

横須賀線に飛び乗って一時間、何とか間に合ったようです。

日本でも有数の観光地 鎌倉と聞くと、

昔から栄えていたような錯覚に陥ってしまうのですが、

あの頼朝が幕府を開いてからの約130年ほどの栄華の後は、

再び海辺の小さな町に戻ってしまい、祭りは意外と

静かな町なのです。

それだけに、地元の方々が大切に伝えてきた祭りが、

絢爛豪華な祭りとは一線を画したしみじみとした風情を

漂よわせているのです。

日本中、数百万人の観光客を集める祭りもあれば、

じっと見つめているのは私ひとりなどという

しみじみとした小さな祭りまで、まさに祭りは千差万別、

祭り狂いの旅人も、年をかさねてくると、そのしみじみとした祭りに

惹かれてしまうのは人生と同じなのかもしれませんですよ。

もう半世紀も通い続けている町 鎌倉

歩くたびに、青春時代からの想い出が彼方此方に

顔を出すのです。

まさかひとつの町にこれほど係りをもち続けるなんて

想いもしなかったのに、鎌倉はいつだって暖かく迎えてくれる

のですよ。

毎日、毎日、押し寄せてくる観光客、そのほとんどの人が

この町で 祭り があることを知らないほどに静かな

長谷の路地裏に甘縄神明神社は鎮座しています、

鎌倉では最も古い歴史を持つ神社なんです、

甘は多分海人のアマ、漁に使う縄、『甘縄』はまさに海の人々を

守る神様なのですね。

抜けるような青空の下、神社の参道へ続く細道には老人が三人

戻ってくる神輿を待っています。

「宮入は何時頃ですかね」

「さあ、多分暗くなる前じゃないですか」

もう神輿の後を付いていく元気はなくなりました、老人には老人の

楽しみ方があるのです、

「ご一緒させていただいていいですか」

一時間もすればきっとあちらから神輿が戻ってくるのですから、

祭りとは待つことなのだということをこのご老人から改めて教えて

いただいております。

「テケテン、テケテン、テンツク テンツク!」

お囃子が聞こえ始めました、

「どうやら戻ってきたようですね」

つづく