朝夕に秋の気配を感じ、すでに心は秋を

受け入れてしまっている、

なのに今朝はいきなりの陽射しに、

すでに過ぎてしまった真夏が

「ヘッ、ヘッ、ヘッ、

 もうアタシのことなど忘れちまったかい」

と顔を出す。

「冗談じゃないよ、今更何の用があるのさ」

「そう邪険に扱うなよ、あんた達の世界じゃ

 新しい宰相選びで 熱い戦いが始まった

 らしいじゃないか、それじゃ、熱くしなけりゃ
 
申し訳ないと、休みを返上してこうしてやってきて

 あげたのにさ」

と夏が言った・・・

暑いのは、温暖化のためだ とか、

ラニーニャ現象のためだとか、

いろいろ理屈を見つけて納得させていた猛暑を

凌いでいたのに過ぎてしまえば忘れてしまうのが

人間の変わり身の速さなのさ、

これじゃ、ボディーブローでふらふらになりながら、

何とかダウンせずに踏ん張っていたボクサーが 

いきなり強烈なストレートパンチを

浴びたようなものじゃないですかい。

「暑さ寒さも彼岸まで」

ってぇことわざがありますでしょ、

若い人には何のことだかピンとこないかもしれませんが、

年寄りには、もう少し頑張れば何とか生き延びられる

という指標になるのでしてね、

その彼岸もとおに過ぎて秋を満喫しているところへ

この真夏の逆襲は、強烈なパンチなんですよ。

朝の空には入道雲がモクモクと立ち上がると思いきや、

地平線の彼方でそっとこちらを伺ったままそれ

以上立ち上がってこないのは、

せめてもの夏の思いやりなのでしょうかね。

空を眺めて

「これは一日だけの辛抱で大丈夫そうだ」

と判ってみれば、仕事場への朝の道も希望の道に

見えてまいりますよ。

夕暮れを待って再び空を眺めに土手に上ってみましたら、

もう夏の姿は何処にもありませんでね。

今朝の暑さは、きっと夏の気まぐれか戯れだったので

しょうかね、

西の空は秋の茜色、

やっぱり東京にも秋は間違いなくやってきておりましたよ。

一日だけの夏の後ろ姿に

「来年会えたらよろしくな」

と呟いていた東京散歩でございました。

荒川土手の上に広がる秋の空

散歩の犬が心なしか元気に歩いているよ・・・