最近、早寝早起きがすっかり身についたようで、

目を覚ますとまずは窓の外を見る、

「うーん、台風は大丈夫かな・・・」

「早寝早起きは年寄りになった証拠ですよ」

なんて言われても本人は

「いや祭りで大汗かいて身体が健康になったからです」

と、あくまでも祭りに拘るのでございます。

暇人に見えてもアタシもまだれっきとした仕事人で、

朝早くか夕方仕事が終わってから、

ごそごそ動き出すというわけでして、

今朝も何はともあれ朝の本所へ駆けつけるのでありますよ。

さすがに神牛役の黒牛さんも疲れたらしく

ぐっすりと眠っていたとか、

今回やって来たのは京都生まれの黒牛、あちらのお祭りでは

精々5~6キロ位が一日の歩く距離らしのですが、

東都の牛嶋神社大祭は、何しろ氏子町内が広くて、

二日で約九里(35km)も歩くのですから

そりゃ、牛もさぞかしびっくりしたでしょうね。

本所の若宮では、

牛も人も草鞋で足元をかため、出発準備が着々と整ってまいります。

若者達は、昨日の疲れがもう出始めたのか、盛んにふくらはぎ辺りを

摩りながら、それぞれの配置につく、

黒牛がいよいよ御鳳輦の牛車に繋がれると、神の牛へと変わっていく、

本日の巡行コースを確認する牛方世話人の方々、

「今日の方が距離が多いじゃないですかね」

「多分、18kmくらいじゃないかな」

「牛も心配やが、ワシらの方が持つかそちらが肝心ですな」

それでも祭りの雰囲気が笑顔を作らせているみたいで、

本日もなんだかありがたい一日になりそうですよ。

鳶の頭の甲高い木遣りの声が朝のしじまに響き渡る、

これが江戸の祭りなんですよ、

みっちりと三番まで唸ると、頭の右手がさっと振り下ろされた、

いよいよ本日の御巡幸の始りです。

心配していた神牛も無事に動き出しました、

御鳳輦巡幸にはお囃子はありません、

静かななかに古式ゆかしい装束が揺れ、ひたひたと草鞋の音がかすかに

聞こえている。

ご一行を見送ると一旦仕事へ戻ります。

実は本日夕刻、牛嶋神社の氏子町内である東京スカイツリーにて

「世界平和祈願祭」が行われるとお聞きしておりましたので

仕事を終わらせると早速東京スカイツリー ソラマチへ、

近代建築の代表のようなスカイツリーもこうしてまじかで

首が痛くなるほど見上げると御神木に見えなくもありませんですよ。

何とか堪えていた曇り空から霧雨が降りかかる中、

神牛に曳かれた御鳳輦を真中に神幸祭一行が近代ビルの広場に

やってまいりました。

このソラマチ広場に御鳳輦が入るのは初めてのこと、

神幸旗 - 鼻高面(猿田彦) - 真榊 - 宮司神官- 巫女・乙女- 雅楽伶人

氏子総代そして宮鳳輦が所定の位置に、

神官による大祓いのあと、宮司祝詞奏上、

現在の不穏な社会へ、平和であることの願いを込めて

全員で祈りを捧げるのでありました。

気がつけば、この祈りの瞬間、雨はあがっていた不思議、

再び動き出した神幸祭一行を見送りながら、つくつぐと

平和であることの大切さを噛み締めるのでありました。

次の大祭は五年後、はたしてアタシは元気で祭りを追いかけて

いられるでしょうか、

さまざまなことを想う祭り旅の途中のことでございます。

(牛嶋神社大祭「世界平和祈願祭」)