旅の途中

谷中散歩 つづき

さてと蕎麦に刺身でいい気持ち、これにぬる燗とくれば

いうことなしですが、なにしろあたしは下戸のコンコンチキ

飲み物はお茶でいいんですよ、さてと散歩を続けますか、

「あずま家」に「花屋」、共に軽食の店、

続いて薬の「一本堂」、疲れた時のリポビタンは散歩の友です、

パンの「マルジュー」さんは昔ながらのコロッケパン、

それより美人の母娘さんの笑顔が素敵です。

駐車場を挟んで、フラダンスの「カレイホマル」があったのですが

いつのまにかここも駐車場、目にも鮮やかな衣装を身に

纏ったオバサマのダンス姿がチラリと眼を楽しませていただけましたのに。、

そして佃煮の「中野屋」さん、アタシが買うのは何時もカツオの角煮、

あれ、確か昔「アンデルセン」という洋菓子屋があったのだけれど・・・

もしかしたら花屋さんがそうかもしれません、もう一度戻って と。

なぜこの店に拘るかというとですね、

アタシの母校、かつては東京府立第一高等女学校で女性のための

高等教育の名門として名を馳せていた卒業生の中に大先輩の方々が

綺羅星のごとくおられましてね、

アタシが在学中は、沢山の優秀な女学生の中に、ほんの一握りの

男子学生がそっと影のようにいるような雰囲気でして、

多分、女性の逞しさ、怖さをその三年間で嫌というほど

知らされたことが、ずーっと今に至るまで身に染込んでいるのですよ。

三木睦子(元首相・三木武夫夫人)
沢村貞子(俳優・エッセイスト)
芝木好子(作家)
水木洋子(脚本家)
石垣綾子(評論家
田村俊子(作家)

後輩では何と言っても

荒木陽子(写真家荒木経惟夫人、エッセイスト)

あたしが写真に夢中になったのは陽子さんの視線に

射すくまれたからなのです。

さて話を戻します、

その大先輩の田村俊子氏は浅草蔵前の生まれ、

幸田露伴の下に入門、

同じく露伴の弟子であった田村松魚と結婚、

『あきらめ』『紅』『恋むすめ』などの作品で

一葉、晶子に次ぐ女流作家として名を馳せたのです、

その当時松魚と住んでいたのが

ここ「アンデルセン」のあった場所なのです。

波乱万丈の生涯は、瀬戸内晴美著『田村俊子』に詳しい。

先日、鎌倉を訪ねた折、彼女の眠る東慶寺にてお参りをして

まいりました。合掌!

上野台地と本郷・駒込台地の谷間にあるのが谷中銀座、

空が広い寺の道からその谷間に向かって降りていく気分は

なんだかもう一度生への覚悟を感じられるようですね。

かつてはここから眺める夕焼けはそれはそれは美しいものでしたが

今は壁のようなマンション群に遮られて美しい夕焼けは見られなく

なりました、それでもこの階段の上に佇むと、人の営みが色濃く

残る熱気が陽炎のように立ち上がるのです。

あんまり寄り道が多くて、夕焼けだんだん に辿りついた時は、

予想通り美しい空が紅く染まり始めておりました。

寺の甍を紅く染めた夕焼けを朝倉彫塑館の屋上で、

あの青年も見つめていた

谷中夕暮れ散歩です。

(2017年7月記す)

Categories: 日々

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2 Comments

  1. 又、皆んなでいきたいです。

    • sanjin

      2020年7月9日 — 1:02 PM

      森川さん、皆で会うことも難しい世の中になるとは思いもしなかったですね。
      今のところ病気にならずに自粛生活が続いておりますが、必ずまた皆で楽しい
      時間が過ごせる希望だけは持ち続けております。
      さすがに、思い出ばかり綴っているのもしんどくなりますね。
      森川さんもどうぞご自愛くださいね。

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