韋駄天走りの台風が列島を駆け抜けていった、

さあ!台風一過の晴天だろうと待ち構えておりましたら

今度はゲリラ豪雨に見舞われあっちでもこっちでも

大騒ぎでございますよ。

八月第三週の土日はどこでも夏祭り真っ盛り、

この台風で早々と中止を決めた祭りもあるという。

台風から遠く離れた関東でも空には黒雲が湧きあがり

突然雨が降りだす不穏な天気の中、

「とりあえず行ってみなけらわからんだろう」

と傘を片手に目指したのは若者の街 下北沢の阿波踊り、

昨年、出会った寶船の面々にもう一度会ってみたいと

思ったからなんですよ。

一番街の中ほどに設えられたスタート地点に、続々と踊り手、

地方の面々が集まり始めている、

みんな空を見上げながら、何とか出来そうだと支度に余念がない、

特に地方連は扱う楽器が、太鼓に三味線、雨を嫌うものだけに

ビニールを太鼓にかぶせたりと準備に勤しんでいる、

「スタート五分前です」

のアナウンスが流れると、もう中止にはならないとみな覚悟の顔に

変わっている。

先陣を切ったのは 高円寺の忍ぶ連、鉦が鳴り響くと大太鼓が

唸りをあげる、

踊り手は、緊張を解されて笑顔が戻っている、

下北沢の路地はどこも狭い、両脇に見物人が並ぶと目と鼻の先を

踊り手たちがその息遣いまで感じさせながら通り過ぎていく。

音頭をとる鉦の音が耳元でガンガンと響く、つい先日熊谷の祇園祭で

聞いた鉦の音を思い出しますな、

下北沢一番街のこの狭い路地がものすごい親近感をもたらせる効果に

寄与しているのでしょね、

勿論、地元商店街のやる気と根気が裏で支えていればこそですがね。

地元の ひふみ連や やっとこ連にはひときわ大きな声援が送られいる、

どうやら、今年もお目当ての 寶船の面々は元気な顔を見せてくれています。

寶船の演舞が始まりました、

アレ、昨年より晴れやかな気がしますね、

そっと訳をお聞きすると、何でも女性団員が随分増えたとか、

それにしても、あのキレのよい踊りと熱いハートはますます

磨きがかかっておりますな。

「死ぬ気でやります!」

はまったくその通りで、型破りに見えながらきちんとけじめが

付いているのです、

基礎がしっかりしていなければ、やぶれかぶれに見えなくもないのに

なぜか惹き込まれてしまう彼らの表現は観る者のハートをいつの間にか

がっちりと掴んでしまうのです。

(2018年8月記す)

(他に類を見ない「寶船」の阿波踊り)

もしかしたらこれは 阿波踊りという名のロックなのかもしれませんよ、

若者の多い観客もいつのまにかこぶしを振り上げ絶叫している、

もうこれ以上惹き込まれてしまうと老人の身体では持ちませんですよ、

彼らの踊りの後ろから、遠ざかる若さの熱風を見送っていた

祭り旅の途中でございます。

前日と打って変わって暑い雨雲のお陰で暑さが気にならなかったことだけは

台風のお陰かとホッとしておりました。

後は若者達にお任せして、老人はこの辺りで退却いたしますかね。