勤め人の退社時間を待たずに

日が暮れてしまう初冬の東京、

あの猛暑の夏も、

はっきりとしなかった秋の訪れも、

みんな過ぎ去った刻の中に消えていく、

もうどこからも

「暑いネ!」

という言葉は聞かれない、

この国は四季のある国、

振り返ってみれば刻の神は

きちんと帳尻を合わせて

くれているのかもしれない。

はらはらとまるで自らの意思があるように

舞い散る紅葉は森の道を染め上げていく、

その舞い散る落ち葉を恨めしそうに

見上げながら何度も繰り返される掃除の男が

ため息をひとつついた。

これ以上ない儚さを感じ取ったのだろうか、

恋人同士が手を結ぶ、

まるで通い合う温もりを確かめるように・・・

東照宮の本殿までの参道は、

東京人にもあまり知られない小道、

日本人より外国人がその繊細な心を

見抜くようにじっと見つめている、

ほとんど葉を落とした桜木の上に

五重塔がその姿を現す、

「オオ、ワンダフル!」

日本人なら何と表現するのだろう

「いいじゃないか」

それとも「寂しいネ」

いや、黙って頷くくらいがいいかもしれない。

一陣の風が吹き抜けた

ぱらぱらと頭に、肩に

鴨の脚ひれの形をした黄葉が

降りかかる、

そういえば、

中国ではその形から『インチョウ』(脚ヒレ)

と呼ぶという、

何時の間にか、日本でもイチョウ

と呼ぶようになったとか、

もう間もなく裸木の梢を木枯らしが訪れるだろう、

「今年の冬はやけに寒いじゃないか」

なんて口ずさみながら、きっと歩き続けているのでしょう、

それが生きている証なのだから・・・

上野東照宮にて