久しぶりに訪ねた街 川口

三十数年ぶりといえば久しぶりとは言わないかも

しれないな などと呟きながら歩き出す。

何しろ『キューポラのある街』なんていうイメージで

語られていた昔の印象が記憶に残したまま

突然訪れたのですからそのあまりにも劇的な変貌ぶりに

しばらく立ち止まってしまいました。

なにしろ全国の30%近くの生産量を賄っており工場も700か所も

あったのですからね。

キューポラと聞いても、もう若い人は何のことやら

ご存じありませんでしょ、

キューポラとは

コークスの燃焼熱を利用して鉄を溶かし鋳物の溶湯を

得るための溶解炉のことで、ここ川口には屋根から突き出た

キューポラのその姿が彼方此方に見られ、鋳物の街として

栄えていたんです。

吉永小百合さんが出演した映画『キューポラのある街』が

そのイメージを高めたことは間違いありませんが、

かつての鋳物工場はすっかり姿を消し、駅前はビルが立ち並び

大都会になっているのですよ。

お聞きすれば人口60万人になるとのこと、何度も頷きながら

商店街をそぞろ歩き。

全国展開するチェーン店が多いのは、東京に近いだけに

さもありなんと、左右を見ながら歩いていると、以外にも個人店が

頑張っているのですね。

まだ、工場が活躍していた頃の馴染みの方々が個人店を

支えているのかもしれませんね。

さらに商店街を進むと、たった一本ですが、

満開の桜に出会います、

買い物の途中で ヒョイと見上げる桜ですね。

商店街の端まで行き、再び戻るころにはすっかり夕闇が街を

覆い始めてきました。

「腹が減った!」

最近凝っている「孤独のグルメ」の五郎さんを見習って

飛び込んだのは、四川料理の中華店、

メニューを見ると、すべてが安い!

四川ならば麻婆豆腐だろうと相変わらず想像力の欠如を

感じながら野菜スープに麻婆豆腐を所望する。

店主はカタコトの言葉で、

「プラス¥100で定食にできるヨ」

それでは定食を。

運ばれてきた麻婆豆腐定食にびっくり、

麻婆豆腐にサラダ、おしんこ、デザートがついて

いるじゃないですかね、

「これでプラス¥100!!」

慌てて食べた麻婆豆腐の辛さに思わず咽る 孤独のグルメで

ありました。

川口は街の姿は変われども、そこに住む人々はそんなに

変わってはおりませんでしたね。

川口はまだまだ庶民の大都会・・・

(2017年4月5日記す)