もうクリスマスの12月だというのに

とてもあたたかな晩です。

大好きなママと一緒にお買い物にきたケン太くんは

いつものパン屋さんを覗き込み

「メロンパンが欲しい」とママにお願いすると、

ママは

「今日は見るだけにしておこうね」

と店に入ってくれません。

ケン太くんはなんだか心配になってママに聞きました、

「ママ、ことしもサンタさんくるかな」

「パパはなんて言ってたの」

「うん、パパはねサンタさんの会社が

倒産したからわからないって」

「そうか、サンタさんも大変なんだよ」

ケン太は泣きそうな顔でうつむいてしまいました。

『オーィ! ケン太くん』

「ぼくのこと呼んだのだれ・・・」

『サンタ会社の社長のサンタクロースのおじさんだよ』

「おじさんの会社倒産したってパパがいってたよ」

『サンタの会社は営業所が沢山あって、ケン太くんのそばの会社は

なくなったけど、隣の町から出張するから大丈夫だよ』

「だってぼくの家、七階だし、エントツだってないのに

よそのサンタさんがわかるわけないよ」

『ケン太くん、ほらみてごらん、隣街のサンタさんが

ビルやマンションの壁だって登れるように今から練習してるのさ』

『ほら、トナカイ号だっていつでも走れるように整備万端さ』

ケン太は壁をよじ登るサンタさんたちを泣きそうな顔で見つめ、

トナカイ号の軽快なエンジンの音に耳を寄せた

「ママ、隣街のサンタさんが来てくれるって」

ママは悲しそうに首を何度もふりました、

「ママ、何で泣いてるの」

「もしかしたら引っ越さなければならないの、

 だからサンタさん

ケン太の家が判らなくなってしまうのよ」

なんだか急に悲しくなって、ケン太も泣いてしまいました。

(ケン太くん!、)

「ぼくのこと呼んだのおじさん?」

(ああ、そうだよ)

「ぼく、おじさんのこと知らないよ」

(悪い悪い!実はおじさんはねサンタの友達なんだ

引っ越した子の行き先を調べてサンタさんに教える仕事を

してるんだ)

「じゃ、ぼくのうちもわかるの」

(かならず探しにいくからあきらめちゃだめだよ、そのかわり

パパやママの言いつけ守っていい子にしてること)

「ママ、ぼく いい子になるからね」

ママはケン太をぎゅっと抱きしめました。

そして、二人は手を握るとパパの待ってる家へと

路地をまがって姿が見えなくなりました。

(よう、サンタのおやじさん、約束したんだから

ケン太の引越し先を突き止めておくれよ)

『ケン太のような子のために本物のサンタクロースがいるのさ』

サンタの社長は、ポンと胸を叩いてウインクをするのでした。