衣替えの季節になりました。

近頃は季節の先取りのような陽気に

夏はすでにきてしまっている気でおりましたが、

やはり衣替えというケジメがあることでその心構をが

しっかりと意識させるのですね。

きものを着て日々を過ごしていた母の時代は、合わせから

単(ひとえ)に着替えることで夏が来たと感じることが

出来たのですが、この洋服生活には中々ケジメがつけられない

ようでしてね。

近頃はクールビズなどという衣替えをとりいれようと躍起に

なっているのは中々おかしさを感じるのでありますがね。

衣服というのは個人の自由に任される範疇ではありますが、

誰に言われるまでもなくこの国の四季が無言のうちに

一番利に適った習慣を作り出させていることにあらためて

四季のある生活の人に与える豊かさを感じないわけには

いかないのです。

高層ビルの林立する大都会の真ん中で昼時間を迎えましてね、

ビルの上から見下ろしていると人間の姿はまるで蟻のように

見えるのですね。

もしかしたら、権力者はいつも世の中を上から下を見るようにしか

見られないのかもしれませんよ。

路上に戻ると、一時間という決められた時間内に、

大勢の勤め人が一度に食事にありつくのですから、

それはそれはあわただしい人の動きがあっちでも

こっちでも毎日のように繰り広げられているのですね。

暇なおじさんは、みんなの邪魔をしないように、昼時間を避けて

ゆっくり食事に行けるのです、

まあ、どちらが人間らしいかといえばきっと誰でも

 暇人さ と応えるに違いないほど、あわただしい1時間が

あっという間に過ぎていく。

そういえば最近の若者は5月病は克服したのですかね、

颯爽と歩く若者の後ろ姿にそっと声を掛けておりました。

「そんなに急がなくても大丈夫だからね」と

さて、昼時間が終わったらしくあんなに道にあふれていた人の姿は

みんなビルの中に吸い込まれてしまいましてね。

ぽつんと残された暇人おじさんの薄くなった頭にカンカンと照るつける

太陽が眩しい。

「夏日だよ」