この国の昔人は季節の変わり目である立春・立夏・立秋・立冬の前
約18日間を「土気」に分類し「土用」と呼んだのですよ、
ですから土用とは春夏秋冬の間に四回あるわけなんですが、
いくら几帳面な日本人でも、そう何回も 土用だ! といわれても
季節寒がばらばらでついていけないわけで、この国では、夏の
あの湿気の多い蒸し暑さで体調を崩す人が多かったので、
自然に夏の土用だけが意識されて残ったというわけなんですね。
その土用の丑の日に鰻を食べると元気になれると大宣伝を
繰り広げたのが平賀源内先生と鰻屋の主人、これが見事に
当たっちまって、土用の丑の日に鰻を食べないと日本人じゃない
とまで信じられてしまい、平成から令和に変わった現代人にまで丑の日と聞くと
頭の中に鰻が湧きあがるのですから宣伝とは凄まじいものかな・・・。
もっとも日本人の鰻好きは今に始まったことではありませんでね、
「痩す痩すも 生けらばあらむを
将やはた 鰻を漁ると 河に流れな」
「石麻呂に 吾れもの申す 夏痩せに
よしといふものぞ 鰻とり食せ」
千年も昔に大伴家持さんはこんな歌を残すほど、鰻は元気の素
と信じられていたんですな。
つい最近、日本鰻が絶滅危惧種に指定されてしまいました、
世界の鰻の70%を日本人が食べつくしている現状を見たら
世界の人々は日本人を奇異の目で見てしまうでしょうね。
「鰻は土用の丑の日だけ食べること」
なんて法規制が始まっちまったら、鰻屋はつぶれちまいますよ、
まあ、何でも細く長く続けることが大事ということですかね。
そういえば、アタシ等の子供の頃は鰻など、滅多に食べられない
高級食材だったんですよ、売れるとなると世界中から仕入れて、
今やスーパーでも牛丼屋さんでも大量に売り出すのですから
そりゃ、鰻は絶滅しちまいますよね。
そういいながら、街を歩いていると、あっちからも
こっちからも鰻を焼く匂が漂ってくるわけで、
つい足がその匂いの元へずるずると向かっていくわけで、
暖簾かき分けて店の中へ入ると、なんと満席1時間半待ちですよ、
諦めてふたたび散歩を続けると、小さな祠のお稲荷さん、
草分稲荷神社なんだとか、素通りできないので手を合わせると
狐の隣にネコさんが鎮座、
そうか丑の日は「う」の字のつくものでもいいじゃないか、
「ガラガラ」と今どき珍しい手動式の戸をあけて
「おばちゃん、キツネうドンね」
あつあつのうどんすすって大汗かいて表にでれば
目の前の樹の上でアブラゼミがジィジィー、
あれま土用の暑さも涼しく感じる丑の日散歩で
ござい。
「うの字」の効果は絶大でございますな・・・
今年の丑の日に食べたうな重を思い出しながら・・・・。
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