「正月」とは、本来旧暦一月の別名なので一月晦日までは

正月と呼んでもいいわけですが、何時の頃から一月一日を大正月

一月十五日を小正月とするようになったようで、さらに松の内を

一月七日までとしてお正月にする風潮になったのは、時代の変化の

速さがだんだん正月期間をも短縮して仕事優先させることに

人々も同調するようになったからでしょうかね。

そもそも、この国には年の初めには年神様をお迎えするという

信仰が根強くあったわけで、そのお迎えした年神様は小正月までは

居てくださるので、門松を立て、御節料理を作り、歓迎するわけで、

神様と一緒にご馳走を食べながら新たな命をいただくのがお正月

なのですよ。

近頃は官公庁や各会社がこの暮れから正月にかけて、休暇をとるために

年神様より自分達のレジャーが優先になってしまい、

正月は家族揃って旅行にいける日なんて人間の都合が優先されて

しまったようですね。

正月の正と言う字をみるたびに、一年間たまりにたまった厄や間違いを

正しい方向へ正すという意味があるような気がいたしますね。

今年は松の内まではせっせと神様へ身を正しにいこうと元旦に願を

かけたものですから、本日も二社を巡りにまいりますかね。

松の内に七つの神様を御参りするとご利益がいただけるという

七福神詣が今年も人気があるようで、浅草や向島あたりでは大勢の人々が

福を求めて列を作っておりますな。

へそ曲がりのフーテン親父は、他人(ひと)様が列を作ると、

急にそっぽをむき出す習性がありましてね、

「ひと様があまり眼をつけない神様はどちらでしょうか」

なんて探し出すわけで、なにしろこの国には八百万の神様がおられますので

お探しするのに手間はかかりませんですよ。

三が日が過ぎると神様も急にお暇になるようで、やってまいりましたのは

創建350年を過ぎた亀戸天満宮でございます。

さすがに天神様のご威光は衰えを知らず、学業成就の学生さんが熱心に

絵馬に筆を走らせておりますな。

アタシときたら、境内に輪を作っている善男善女の間から覗き込めば

正月恒例の猿まわしでございます。サルを見ると他人に見えないのが

申年生まれの性でございまして、回ってきた大きなザルに大枚千円を

投げ入れニコニコ笑顔で振り向くと、百円しかお賽銭をあげなかった

天神様が恨めしげにこちらを見つめているように感じて、なんだか悪行を

働いた気分で次なる神様の元へスタコラと向かうのでございます。

こちらは、天神様より千年も前から鎮座されておられる香取の神様で

ございます。

昨年は、本家の香取神宮大饗祭に参加させていただいた御礼を申し上げ、

「勝ち守り」を押し頂いて、巫女さんから

「ようこそ御参りいただきました」

などと優しい声を掛けてもらっただけで、急に元気が出てくるというのは

これをご利益といわずになんとしょ。

今度は堂々と御参りを済ませて胸を張って参道を歩く気分のなんという

正しさなるかな。

まさに松の内は 正月 でございます。

(亀戸界隈にて)