いよいよ各地で夏祭りたけなわですね、

夏は関東各地でも祇園祭が華やかに行われる季節なんです、

祭りの楽しみ方はいろいろありましてね、

小さな子供さんは、露店での彩鮮やかな品の数々にこころを

奪われ、少女たちは浴衣を着てそぞろ歩くもよし、

祭り衣装に袖を通した大人たちは、顔つきまで変わって

神輿担ぎに力を注ぎ、山車の上では祭り囃子が唸りをあげ、

ギシギシと山車や屋台が動き出す。

動き出した祭りはもう誰も止められないのです。

山車囃子が目の前を次々と通り過ぎていく

山車の巡行が始まったようです。

山車の後ろからついてまいりますかね、

山車の周りの提灯に明かり点されるとまさに動く花山、

どうやら宿場通りから駅前へ向かうようです。

駅前交差点は、最初の見せ場らしく、大きな山車の方向を変える

ための若衆たちの動きが激しくなるのです。

山車の四輪は固定されたままなので、まずは後ろに着いた若衆たちが

屋台を押し下げ、前の若衆が力任せに持ち上げる、ギシギシと音を立てながら

山車は九十度の方向を変えていく。

駅前通りに七台の山車が整列を済ませる、

観客のほとんどが今から始まることへ固唾を呑んで見つめるなか、

大神町の若頭の合図の提灯が振られた、いよいよ花山駆け上がりが

始まった、

駅前通りは駅前広場に向かっていくらか上り坂になっている、

若衆頭の顔つきが変わる、木の音が響き渡ると同時に

山車が一気走り出した、

山車を曳く者、山車を押す者、その呼吸が合わないと山車は

まっすぐ走らないのです、勢いづいた山車が一気に駆け上がっていく、

周りから拍手と歓声があがる。

(先陣を切った大神町山車)

今年の当番町は助町である、その張り切りがみなぎっている、

大歓声の中、見事な駆け上がりを見せてくれました。

先ほど和気藹々としたふれあいをしてきた荒宿の山車が

駆け上がってきましたよ、

見事な山車さばきに、思わず拍手を送っておりました。

中には勢い余って観客席に飛びこんで行きそうな山車もあり、

そのぎりぎりのところで急停止ささえるという荒業もあり、

悲鳴と歓声と拍手が唸りをあげるお囃子と絡み合って

広場には熱気が渦巻いている。

(荒宿山車の勇姿)

最後の北町が一気加勢に押し上げると花山駆け上がりは無事

納まることができました。

駅前広場に勢ぞろいした各町の山車はまさに花山なんですね、

当番町の音頭で一本締めが高らかに打ち終えると、ひっかわせ

が始まる、

夜空に太鼓の音が立ち上っていく。

そしてこの花山にはどこの山車がよかったか、審査されて

優勝が決まるという楽しみもあるのです。

一瞬、広場がシーンとなると、

「今年の優勝は・・・仲町です!」

仲町の山車が大揺れに揺れている。

優勝町内には、若頭が振る提灯、それも赤い提灯が贈られるのです、

この赤い提灯が仲町の誇りを表すというわけなんですね。

ひっかわせが終わると、各町内の山車が今度は静かに広場を後にして

自分達の町内へと戻っていきます。

「嗚呼、今年の祭りが終わってしまう」

そんな気分が山車の後ろ姿に漂い始めている。

(当番町 助町山車)

若者達には希望の未来があることを祭りが教えている、

老人達は今年の祭りを見納めた安堵とともに、

来年も祭りに参加できるだろうかという不安もよぎるのです。

人夫々に感慨をもたらす上気した祭り人の顔が提灯の灯りに

照らし出されておりました。

三百年続いているという幸手の夏祭りは本気の溢れた人間ドラマで

ございました。

幸手のみなさまに心からの感謝を申し上げて次なる祭りへと

旅を続けてまいります。

2016年7月記す