未だ本場羽後町の西馬音内盆踊りを見られないでおりますが、

ここ東京ドームでは三度目の西馬音内踊りでございます。

今年は囃子方の甚句や音頭の歌声に聞き耳立てながら、踊りを

見つめておりますよ。

「がんけ(甚句)」

 お盆恋しや かがり火恋し まして踊り子 なお恋し

 月は更けゆく 踊りは冴える 雲井はるかに 雁の声

 踊る姿にゃ 一目でほれた 彦三頭巾で 顔しらぬ

 今宵ひと夜は 力のかぎり 踊れ東の しらむまで

 踊れ踊れよ 夜が明けるまで ひびく太鼓に 月がさす

 がんけ踊って 知らねでいたば 夜明け烏が 阿呆というた

 踊ってみたさに 盆踊り習った ヤッと覚えたば 盆がすぎた

 揃うた揃うたよ 踊り子揃うた 稲の出穂より なお揃うた

 踊り踊らば 三十が盛り 三十過ぎれば その子が踊る

嗚呼!やっぱり「端縫い衣裳」の踊る姿にくぎづけです。

八尾の風の盆では揃いの浴衣の踊り手は若い娘さんなので、

色気が出すぎないようにと手の指を反らす使い方を戒められている

と教えていただきましたが、西馬音内の踊り手は普段は妻として

生きているためか、この踊りの中では思い切り色気を出して

いるように感じますね。

指先の反り方、腰の媛り方、どうやら囃子方の歌の中に

そうさせる何かが含まれているのかもしれませんね。

「西馬音内音頭」

 「時勢はどうでも 世間はなんでも 踊りこ踊りたんせ 

   日本開闢 天の岩戸も 踊りで夜が明けた」

 「踊りの上手も 見目のよいのも 土地柄血すじ柄 

   なんでもかんでも 嫁コを欲しがら ここから貰たんせ」

 「西馬音内女ごは どこさえたたて 目に立つはずだんす 

   手つき見てたんせ 足つき見てたんせ 腰つき見てたんせ」

 「名物踊りは 数ある中にも 西馬音内あ一番だ 

   嫁こも踊るし 姑も踊る 息子はなお踊る」

(2018年東京ドームにて)

 「隣の娘さ 踊りこ教えだば ふんどし礼にもらた 

   さっそく持て来て 嬶どさ見せだば横面なぐられた」

 「一杯気嫌で 踊りこ踊たば みんなにほめられた 

   いい気になりやがて 頬かむりとたれば 息子にどやされた」

はてさて、羽後町に行ってみたい願望がますます募ってしまいました、

このまま夢としていつまでも抱いているほうが幸せなのか、

それとも、本場の踊りの輪の中に紛れ込んだ方がもっと

いいのか・・・

あの笠の中を直接見ない方が幸せなのか、

それとも今日のように美しい女人にお目に架かれるのか

千路に心が揺れております。