武蔵国南足立郡千住宿のお祭りといえば氷川神社、
ところが千住宿にはその氷川神社が 数々ありましてね、
千住神社 祭神 須佐之男命
千住本氷川神社 祭神 素盞嗚尊
千住氷川神社 祭神 素盞嗚尊
仲町氷川神社 祭神 素盞嗚尊
大川町氷川神社 祭神 素盞嗚尊
と、いずれも荒ぶる神の素盞嗚尊を祀るだけあって
神輿の渡御となるとそりゃもう大荒れに荒れるのでありますよ。
長月九月も白露を迎えると東京の下町の祭りは、
秋祭りで賑わうのであります、
千住を皮切りに、下町の底力を見てくれよとばかりに
街が祭りに染まってまいります。
今宵は宵宮、千住1~5町会の連合神輿渡御、
あの東日本大震災の年
「今年はダメかもしれないな」
と誰もが思っていたのに、千住は違っていました、
「祭りはやるよ」
「あんなにひどい目にあってる人たちがいるのに、
じっとしてるなんてできやしないじゃないか」
しかし、祭りはひとりの力ではどうにもならないのです、
みんなの力が集まってしかやれないのですよ。
それって、復興と同じじゃないですか、
ひとりの力では出来ないことも、大勢の人の力が集まったら
前へ向かって進めるのですから。
あれから六年、今年も一年ぶりに神輿が引き出されています。
みんな、祭りが出来ることの幸せを噛み締めているのです。
一丁目の獅子頭がやってきます、三丁目の神輿も、四丁目も、五丁目も
みんなやってきました。
地口行灯に灯が点ると、各町内の神輿が板垣通りに
勢ぞろいです。
各町内長、警察署長、消防署長、校長先生、祭り世話人、そして
各町内の大勢の人々の想いがここに集まったのです。
「東京の千住から、元気を送ろうじゃないですか」
世話人代表の挨拶に、盛大な拍手が上がった。
手打ちの合図で一斉に神輿が上がった、
高張提灯を先頭に、小気味のいい神田囃子が「打ち込み」で
祭りを盛り上げていく、
「テケテン、テケテン、テケテン!」
目を覚ました千住神社の獅子頭が悪霊を祓う、
三丁目の神輿が二天棒による神輿振り、
荒ぶる神様が頭を振り続ける、
負けずに四町目の神輿が上下に揺れる、
まるで海の波のよう、
五丁目の神輿から元気な掛け声、
「ソレ ヨッサ ヨッサ ヨッサ ヨッサ」
「テケテン、テケテン、テケテン!」
夕空に見事な月が上がった、
そうだ少し欠けた十八日の月ですよ、すると次の満月は
中秋の名月になるわけですな、
各地で沢山の人々がこの月を見上げているに違いありません、
「あの丸い月に届け」
とばかりに祭り人はみんなで元気をぶつけている、
きっと月に反射したこの元気は、かの地の被災された方々へ
降り注ぐように届くに違いないと信じているのです。
「ソレ ヨッサ ヨッサ ヨッサ ヨッサ」
「テケテン、テケテン、テケテン!、テケテン、テケテン!」
東京千住氷川神社宵宮 五町会連合神輿渡御にて
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