今は街を歩くといたるところに防犯カメラ、監視カメラが
設置されていて、犯罪防止に役立っているという理由で
個人のいいことも、悪いこともみんな見られているんですよね。
実はこの方法ってはるか昔からあったんですよ、
先日、珍しい仏教劇の「鬼来迎」を観てきたのですが、
三途の川の辺りにやってきた亡者が閻魔大王の前で裁きを
受けるのですが、其処には亡者の生前の善悪を映し出すという
「業鏡」という鏡があって全てがわかってしまうというのです。
そうです、大昔から三途の川の辺には監視カメラと同じ役目をするものが
ちゃんとあったのですよ。
日本人は昔からこの「業鏡」が娑婆の姿を映し出すことを
信じていたんですね、
それでも、現代のように24時間、365日四六時中見張られていたのでは
なく、「業鏡」は正月・五月・九月と限られた期間だけ見張られていたという
のです、中々、閻魔大王も粋な計らいをするものでしょ、
ですから、正月・五月・九月は悪いことをしないように、また人のために
なることをしてあの世に行った時に、「業鏡」にいい事が映る様に
心がけたのですよ。これを正五九参りといって庶民はことのほか大切に
したというわけなんです。
さてと、縁日のお話でしたね、
縁日とは神様や仏様との有縁の日のことで、
年に一度の神様との有縁の日には例大祭というお祭りを行ったり、
妙見様は毎月1日・15日、閻魔様は毎月6日、薬師様は毎月8日、
金毘羅様は毎月10日、虚空蔵様は毎月13日、観音様は毎月18日、
お大師様は毎月21日、お地蔵様は毎月24日、天神様は毎月25日、
お不動様は毎月28日、
まだまだありますよ、毘沙門天様は正月・5月・9月の第一の寅の日、
摩利支天は毎月の亥の日、酉の日、申の日、馬の日、もうこうなると
毎日が縁日というわけですよ。
さて本日は24日、そうお地蔵様の御縁日、それも正五九の大祭で
ございますよ。
あの閻魔様の御膝元で業鏡がジージーとこの世を見張ってるのでございますよ、
まさか、悪事を働いてなんかいないでしょうね、
他人様にいいことしてますか・・・
ええ、日頃の怠けぶりを見つからないように、本日はせっせと
お地蔵様詣でというわけでございます。
江戸のお地蔵様といえば、そりゃ巣鴨のとげ抜き地蔵でございましょ、
なにしろ、あの世に一番近い年寄りが大勢集まる老人憩いの街なんです
アタシも堂々とこの街を闊歩出来る年寄りに入れていただきましたので
胸を張ってやってきたというわけでございます、
巣鴨といえば中仙道の入り口でしてね、その入り口に鎮座されて
いるのが 醫王山東光院眞性寺のお地蔵様、
江戸六地蔵のひとつで、旅の無事を適えてくださるという
ありがたいお地蔵様なのですから、素通りなどめっそうもありません
ですよ。
旅の無事をお願いしてまずは手を合わせます。
ところが、連休の終わるのを待っていたかのように雨ですよ、
露店は既に店仕舞いに忙しく、老人の姿はもうありませんでね、
やっと見つけた婆様にお尋ねする、
「今日は盛大な護摩炊きがあると聞いてきたのだけれど・・・」
「今頃来たってもうとっくの前に終わっちまったよ、年よりは
朝が早い分、夜も早く寝ちまうのさ、アタシなんか夜の8時には
蒲団の中さね」
やれやれ元気な爺ちゃん、婆ちゃんに老人の極意を聞き出そう
なんていう儚い望みも叶わぬ夕暮れでございますよ。
高岩寺の本堂もウソのようにガランとして寂しい限り、
やっぱりお参りは、早起きしないとご利益がありませんかね。
アタシはどちらかというとお地蔵様より観音様がご贔屓で
ございましょ、洗い観音様の頭の辺りをよーくお洗いして
「ボケはもう少し先にしてくださいまし」
さてと、お参りも無事済ませて、いつもの夕暮れ散歩といきますか、
あっちの店、こっちの店を覗き込んでは
「これは何だ!」なんて質問してるうちに両手にいっぱいの
お土産ですよ、いやいやこちらのどのお店もパワーは凄いですな、
気の弱いアタシなんぞは、絶対にいらないといわせない機関銃トークに
脱帽でございます。
夕暮れの街に突然の 赤・赤・赤のパンツ、
さすがに店の中には入れず、遠くから質問、
何でもこの赤パンツはいてると元気になれるのだそうですよ。
うーん、歩いてる婆ちゃんがみんなこの赤パンツはいてるのかと
想像したら、何だかこちらの元気まで吸い取られそうな気分の
夕暮れ縁日散歩でございました。
H27.9.24 西巣鴨にて
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