日本の祭りを訪ねる旅を続けて随分時が過ぎました、

まだ気力も体力もあった昔は、興味のある祭りの話しを

お聞きすると東北、北陸、関西はもとより遠く九州までも

訪ね歩いておりましたが、いよいよ古希を過ぎてくると

気力はあっても体力がついていかなくなることが実感として

強く感じるようになりましてね。

旅をするというのは、必ず移動すること、中でも祭りを

訪ねる旅は、現地に着いてからが神社、神輿、祭り人の

動きを追い続けるともう走り回るということの連続なんです、

(行方五町田八坂神社祇園祭の船渡御)

好きで始めたことですから、それは楽しさこそあれ

マイナス要素など無いと思っておりましたのに、肝心の

自分の身体が思い通りにいかなくなっていたんですね。

それじゃ、オトナシク自分の部屋でインターネットでも

見ながら祭りを楽しんでいればいいじゃないか・・・

ところが、そんな静かな生活はアタシにとっては死んだも

同じだと気付いたんですよ。

(12年毎の鹿島神宮御船祭)

人と人が集い合って、そこに生まれる神との交感こそが祭り

だと改めて気付かされたのです。

もう、東北や九州は無理でも、関東近郊ならばなんとか

ついていけるかもしれない、

こうして選び出したのが房総半島の祭りなのです、

ここ十年間でも常陸、房総の祭りは随分参加させていただいて

まいりました。

(勝浦大漁まつり)

72年に一度催行される金砂神社磯出大祭礼、

12年毎の鹿島神宮御船祭、

那珂湊八朔まつり、大洗磯前神社例大祭、

行方五町田八坂神社祇園祭の船渡御、

館山国師祭り、千倉白間津日枝神社大祭(おおまち)、

上総一宮玉前神社十二社まつり、

勝浦大漁まつり、御宿秋祭り、

これらの祭りに共通しているのは祀られている神は

海からやってきたということなのです。

(千倉白間津日枝神社大祭)

神が鎮座されている御社は山の上であったり、

海から離れた里であったりしているのですが、

祭りになると、神輿を担ぎ、また船に乗せて

必ず縁のある海へ向かうのです、

考えてみれば常陸や房総に限らず、

この国のぐるりはすべて海に囲まれているのですから、

神は空からか海からやってくるという伝承があるわけ

だったのですね。

(千倉白間津日枝神社大祭)

安房の国の歴史は神の歴史、

いつも訪ねる布良の港、布良神社、

安房神社には黒潮に乗って海から人々がやって来た

という伝承が数多く残されているのです、

もしかしたら海から安房にあがった人々は

やがて房の国へ広がり、各地に海からの

伝承を伝え続けたのでしょうか、

(館山国師祭り)

その伝承が千年以上も昔から残されているのが

祭りの中での神事なのです。

今年の九月はほとんど陽を見ない日が続きました。

昔も今も、天候だけは人間の力ではどうすることも

出来ないのです。

古人たちはどうしたでしょうか、

(館山国師祭り)

人間の力の及ばぬことは神に祈るしかなかったのです、

その神への祈り、

それは五穀豊穣であり大漁祈願であり、家内安全として

祭りを行ってきたのですね。

雨の降り続く中、上総の海のまつりをお訪ねしましょう、

まだ見ぬ上総大原の海の民のまつりでございます。