荒ぶる神素盞雄尊をお祭りする素盞嗚神社の天王祭です。

五穀豊穣を祈る農耕祭りとは一線を画す夏に流行する

疫病を祓うことを願う祭りです。

本祭りは三年に一度、昨年の本祭りはそれはそれは

見事なものでしたよ。

今年は陰祭り、本社神輿はお休み、氏子61ケ町の

町内神輿が繰り出して、

ぐっと身近なお祭りなんですよ。

本祭りか陰祭りかは、そりゃ人出のの数が違いますから

気付くはずですが、

一番判り易いのが、境内の舞殿に稲田姫の山車人形が

飾られていれば本祭り、

やっぱり今年はそのお姿がありませんでしょ、

ですので陰祭りというわけですよ。

境内は隙間もないほど露店がひしめき、子供達にとっては

まるで遊園地の様相、

祭りは楽しいものということを子供の頃から植え付けておかないと、

「祭りなんてつまらない」

なんて大人が出来上がっちまいますよ。

威勢のいい掛け声が近づいてきました、

宮元瑞光の町内神輿のお祓いです、

「かぶりものをとれ!」

若頭の掛け声に、鉢巻を外し、神妙な顔で頭を下げ神主の

お祓いを受けると、

さていよいよ神輿の町内渡御の始まり、

本社神輿を担ぐには、白装束と決まっておりますが、

町内神輿は夫々の半纏をまとった若衆達が

荒ぶる神様をこれでもかと右に左にと揺する神輿振りは

天王祭の華でありますね。

さて、お祓いを受けた町内神輿はそれぞれ各町内へ、

その途中で何度も何度も神輿振りを披露、

「肩入れ替えろ!」

の合図で神輿が右に左に揺れ動く様いと凄まじきかな

ところが、下町といえども担ぎ手の手勢は決まった顔ぶれ、

年々歳を取るのですから、神輿の重さが肩に腰にのしかかり、

自分の町内へ辿り着く頃には、もう息は上がり、足は上がらず

目は空ろ、そこへ若頭の容赦ない掛声が飛ぶ、

「もういっちょう!」

「それっ、わっしょい!わっしょい!」

もう明らかに体力の限界を超えているのは明らか、

そこへ再び

「もういっちょう!」

顔は笑っているのに目は

「うへー、まだいくのか!」

八回も揉んでは神輿振りを繰り返して、やっと手締めに

みんなの顔に、遣り通した満足感が溢れておりました。

本日宵宮の宮元瑞光神輿もそれはそれは美しくも想いの

こもった神輿振りでございます。

祭りの宵宮とは勇ましいだけではなく、

喜びを噛み締める人のこころまで

そっと見守ることなのかと、

あらためて祭りの奥の深さを垣間見た想いが

いたします。

祭りは本当にいいもんですね。

(2016年6月記す)