昨夜は中秋の名月を祭り囃子を聴きながら眺めておりましてね、

日本人でよかったと心から思えた宵でした。

ところが十五夜の月は満月とは限らないのだそうじゃないですか、

まあ、満月ばかりがいいわけじゃありませんで、昔から月の出を待つ

ことをことのほか大切にしてきたのが日本人というもので、

満月の宵から一日ごとに月の出が遅くなっていくことを待つ身にてらして

立待月(たちまちづき)、居待月(いまちづき)、寝待月(ねまちづき)、

などと名づけていたんですね。

さて今宵は十六夜(いざよい)、一晩中月が出ているわけで、

不知夜月(いざよいづき)などと呼ばれているのですが、その十六夜の月が

満月、それも滅多になく大きく見える日だそうですよ、

十五夜より少しだけ月の出が遅れるので、月がためらっていると感じた昔人は

そのためらう意味のある「いさよう」月と名づけたのでしょうかね。

満月というのは、太陽が西の空に沈むと、それからわずかな刻をおいて

東の空に上がり始めるのです、

いつもの散歩の途中で鬼姫様から買い物を頼まれていたことを思い出し、

谷中銀座商店街へ、夕焼けだんだんに佇むとこの季節には珍しく薄い夕焼け、

冬になると見事な夕焼けが見られる場所ですが、満月を待つには

程よい夕焼けですよ。

買い物を済ませると、いよいよ十六夜満月を眺めにまいりますか。

勿論谷中の坂の上から西の空を眺めるのもいいのですが、

今宵は大川(隅田川)の辺りからデカクテ赤い満月を眺めにまいり

ますかね。

桜橋までやってくると、月待ち人がちらほら、

「あっ、あがったよ!」

「スーパームーンて言うんだって」

若いカップルが楽しげに語り合っている。

確かに心もちいつもの満月より大きく感じますかね、

太陽が西の空に沈むのも思った以上に早く感じるものですが、

月の出もあっというまに登り始めるのです、

上がるにしたがって大きさは小さくなっていつもの満月と

変わらなくなりました。

時々、流れる雲が月を隠したりするさまいとおかし、

今宵は一晩中月が出ているので次の場所へ移動しますか、

へっ、へっ、へっ、行きつけの風呂屋の露天風呂から手拭い頭にのせての

お月見でございます。

もう是に勝る月見はございませんですな。

ああ、シアワセ・シアワセ

H27..9月満月の浅草にて