日本の祭りは神事としての祭礼と余興としての楽しみが

あって祭りが華やかさを醸し出しているのです。

神事のなかで奏でられる雅楽の音色には厳粛な場を表す効果が

あるようですが、さらに祭り囃子が加わると喜びを醸し出すのです。

神とともに喜びたいという人間の希望は、神への奉納という

形で、祭り囃子、里神楽、地芝居を続けているのです。

(鐵砲洲稲荷神社例大祭 奉納歌舞伎 口上)

TVやインターネットの普及で神楽や歌舞伎も気軽に観ることが

出来るようになりましたが、祭りの中での奉納となると

演じるための伝統を受け継がなければならないのです。

観ると演じるとは大違いで、多くの人の手を経なければ

舞台に立つことは出来ないでしょう。

その歌舞伎をこども達が演じることは余興の範疇を超えて

祭りの中の神と一体になれることを表しているように

感じますね。

(竹本弥乃太夫社中)

例大祭奉納 新富座こども歌舞伎

口上    中央小 女子(小6)

寿式三番叟 泰明小 女子(小5)

      有馬小 女子(小4)

      佃島小 女子(小5)

(寿式三番叟)

江戸の昔、歌舞伎は浅草猿若町の中村座・守田座・市村座の三座に

だけ限られておりましたが、明治維新とともに新政府は東京の歌舞伎を

十座に限ると決めてしまうのです。

十二代目守田勘彌は明治5年(1872年)守田座を新富町に移転し新富座を

と改称して歌舞伎を続けたのです、それは木挽町(現銀座)に新歌舞伎座が

建設される17年も前のことで、新富町が歌舞伎の中心地になったということ

でもあったのです。

(歌舞伎座では舞台下手の黒御簾の内で演奏する囃子方、今回は・・・)

その新富町に平成19年、地芝居としてのこども歌舞伎を旗揚げしたのです。

アタシの祭り行脚の中で、近頃こども歌舞伎を観る機会が増えましてね、

那須烏山、秩父小鹿野、東京あきるの など、こども達の真剣なまなざしに

惹きつけられてしまうのです。

歌舞伎とは縁のある土地にこども歌舞伎が出来たことはこんなに嬉しい

ことはありません。

さて今年も、その新富座こども歌舞伎が

鐵砲洲稲荷神社例大祭 奉納歌舞伎として演じられると聞き、早速出かけて

まいりました。

(白浪五人男 稲瀬川勢揃の場)

(日本駄右衛門)

昨年までの神社境内 舞殿ではなく明石小学校体育館をお訪ねすると

立派な舞台が設えてあり、観客席は満席でございます。

幕はありませんが、堂々たる舞台にどんな名演技が観られるか

楽しみでございます。

白浪五人男 稲瀬川勢揃いの場

 日本駄右衛門  月島第一小  女子(小5)

 弁天小僧菊之助 月島第一小  女子(小5)

 忠信利平    阪本小    男子(小4)

 赤星十三郎   泰明小    女子(小3)

 南郷力丸    阪本小    男子(小4)

 捕り手     月島第一小  女子(小2) 泰明小  女子(小2)

         阪本小    男子(小2) 城東小  男子(小2)

         常葉小    女子(小2) 阪本小    男子(小2)

(弁天小僧菊之助)

長い口上をよどみなく演じきった女子(小6)にまずはびっくり、

その口跡、抑揚のとり方、落ち着いた演じ振り、よほどの稽古も

さることながら、指導する方々の力を感じさせるものでしたね、

この鐵砲洲稲荷神社の氏子町内は、昔からの歌舞伎に縁の深い町、

その町に流れている歌舞伎魂がきっと素晴らしい演技を生み出して

いくのかもしれませんね。

続いてお馴染みの、白浪五人男 稲瀬川勢揃いの場

地囃子は大人で固めているので、舞台が絞まります、

勿論演じるのは平成の現代に生きるこども達です、

白浪五人男のうち三人が女子、二人の男子(忠信利平と南郷力丸)に

会場からヤンヤの掛け声が飛ぶのでした。

小学生だと圧倒的に女子が大人びて見えるものですね。

それにしても

あの名台詞をよどみなく唱え、一人ひとりが大見得を切る度に

拍手と歓声が沸き起こり会場が一体になっているのはなんと

素晴らしいことでしょうか。

こども達の熱演に手のひらが痛くなるほど拍手を送って

おりました。

(2016年5月記す)