大國魂神社の祭礼はくらやみ祭りと呼ばれている通り、ほとんどの祭事が

夕暮れを待って催行されるのです。

神聖な御霊が神社から神輿に移り御旅所に渡御するのは人目に触れる事のない

暗闇でなければならないという神事の伝統が、かつては夜の闇の中で行われて

おりましたが、さすがに現代は夕暮れを待って催行されるようになったらしい

のです。

おかげで仕事を終えてから何とか間に合うようになりましたのはありがたい

ことでございます。

今回は5月3日の競馬式に焦点を当て、はせ参じたのでございます。

競馬式といえども、馬が競い合って走るわけではないらしい、

かといって流鏑馬とも異なるようです。

競馬式を こまくらべ と申し、往古より国司によって執り行われた行事で、

なんでも千年以上前から続けられているのだとか、

武蔵野国の国府は武士の勃興とともに多くの牧が作られ、良馬が産出される

ようになっていたのですね、

国司は駿馬を朝廷に献上するために、多くの馬の中から四頭の駿馬を此処府中に

集め、検閲をするために一之駒から六の駒までを順に走らせ一番の駿馬を選び出す

行事を 競馬式(こまくらべ)と呼んで毎年行っているのだそうです。

夜の7時を過ぎた頃、現在は六頭の馬に騎士6人が馬を牽き、神社に集合し御祓いを

受けると、一之駒より順次旧甲州街道へ引き出される。

昨年まではケヤキ並木通りで行っていた競馬式は、今年からは旧甲州街道を

使って行われるとの案内が流れる。

御仮屋の前に到着した六頭の馬は「名対面の儀」を行うと、

順次発走するという。

なにしろ道路の両脇は人で埋まっています、いつ馬がやってくるのかは

誰も判らないのです、

やがて歓声が馬の出走とともにこちらへ伝わってきます。

コンクリートの道路は馬の足音が高らかに聞こえてくると目の前を馬が

通り過ぎていく。

騎手は烏帽子に直垂姿で見事な手綱裁きでありますよ、

距離にすれば150mほどの道路を三往復して競馬式は無事終わった。

どの馬が一番の駿馬であったかはわからないままでしたが、

千年もの時をかけて続けられているという儀式はまさに神事そのもので

ありました。

この競馬式は生身の馬が走るのですから、事前に

「馬は光や音に敏感に反応してしまうので

   カメラのフラッシュはお止めください」

のアナウンスが流れ、夜の薄明かりの中を出走する馬の写真は

ぶれぶればかりでした。

神事は写真に写すことではなく、おのが眼で見続けた真実をこころに

留め置くことなのだとアラタメテ教えられましたよ。

それれにしても闇の中で行われる祭りとは神秘と想像の世界を喜び合う

ものかな。

来年はどの日を選び出して訪れるか、楽しみが募るばかりの祭り旅の途中

のことでございます。

(2015年5月3日記す)