欅並木が新緑に輝く五月の声を聞くと武蔵国府 府中の町に

祭り囃子が聞こえてまいります、

「六社明神さま暗闇祭りヨ

 闇に旅所へ渡御なさる

  あれは灯じゃない空の星    

   星さえ府中を出てのぞく」

と府中小唄に唄われる大國魂神社のくらやみ祭が始まるのです。

武蔵野国総社大國魂神社は年間四百を超える神事が

行われている、中でも4月30日から始まる例大祭は

くらやみ祭りと呼ばれ、大國魂神社最大の祭りなのです。

4月30日 品川海上禊祓式(汐汲み・お浜降り)

    神職一行が品川海上に出て身を清めるとともに、
    清めの汐水を神社に持ち帰り、大祭期間中の朝夕
    潔斎時にはこの汐水を使用する。

5月1日 祈晴祭(一日祭の後引き続き行う)

    大祭期間中の安全と共に 雨の降らない事を祈る祭典。

5月2日 御鏡磨式

    御輿に付ける鏡8枚を塩で磨き清める儀式。但し現在は
    磨いた後本殿に納める。

5月3日 山車の競演 ・競馬式(こまくらべ)

5月4日 御綱祭 萬燈大会 子供御輿渡御
    太鼓の響宴 山車の巡行

5月5日 例祭
    道清め 太鼓送り込み 宮乃咩神社奉幣
    御饌催促の儀 動座祭 威儀物授与 
    御霊遷の儀 御輿渡御

5月6日 御輿還御 鎮座祭

例祭といえどもことほどさように、一度や二度参拝に訪れたくらいでは

判らぬことばかりでございます。

とても一度ですべての祭事を巡ることはできませんので、

毎年一日づつで今年はやっと四年目、それとても旅人としての

祭りの行脚ですのでほんの表面だけを感じたに過ぎないのです、

それでも毎年訪ねる度にその伝統と古式を残す祭事には感動させられる

ばかりでございます。

まずは本殿に参拝、すでに飾り付けの終わった六基の神輿が

本殿内庭に飾られています。

一之宮 小野神社、  二之宮 二宮神社、

三之宮 氷川神社、  四之宮 秩父神社、

五之宮 金鑽神社、  六之宮 杉山神社、

さすがに武蔵野国の総社ですね、六社の夫々の神社はすべて

今まで参拝してきておりますが、そのすべてがここに勢ぞろいし、

御本社並びに御霊宮を合わせて 八社の神輿が渡御するさまは

想像しただけでもわくわくいたしますね。

浅草の三社祭だって一之宮、二之宮、三之宮の三基であれだけの

盛り上がりをするのですから、果たしてどうなることか・・・

アタシ等の子供の頃は、神様を直接見ると目が潰れるから絶対に

見てはいけないと教えられておりました、

特に神の御霊が神輿に移られる時は、すべての灯りを消して、

闇の中で行われるというのが当たり前でしたが、今は夜でも

灯りが絶えない都会では、昔からの仕来りを守ることも難しくなって

しまっているのです。

どうやら、大國魂神社の祭礼は、その闇の中で行うことを厳格に守って

きているのでしょう、特に御霊入れの儀式は今も人の目に触れないように

古式に則って行われているとのことでした。

多分、暗闇の中で神輿渡御が行われていたのでしょうが、

それも時代の流れの中で、現在は夕方から始まるという折衷案が取られて

いるようです。

まだ神の御霊の移られていない神輿を、内陣の垣根の隙間から拝謁する。

どの神輿もなにやら謂れと、伝説がありそうですよ。

さて余所者が神聖な場所を徘徊しては申し訳ないと、神社を後に参道を欅通りへ、

灯りと匂いの入り混じった露店がずらりと並び中にはあの懐かしいお化け屋敷が

あるではないですか、ここは昭和の匂いがたちこめる祭りでございますな。

もうすでに、山車の上ではお囃子が響き渡り、子供達の舞が続いておりますよ。

小童はまさに神の子なんです、

それにしても、この立派な山車が舞台になり、衣装を着けて舞い踊れるというのは

なんと素晴らしい文化でしょうか、

大人たちは、影で支えながら、文化の伝承を楽しみに代えて子供達に伝えて

いるのでしょうね。

時代に流されず、古式を守り、さらに伝承を続けるというこの町のやり方は

神に守られている証なのかもしれません。

いつまでも鳴り響く祭囃子に包まれて、幸せな気分を満喫していた祭り旅の

途中です。

(2014年5月記す)