「もしかしたら、その昔見た

 富士山に出会うかもしれないよ」

宿のオヤジさんがそっと教えてくれたその場所へ

遮るもののない空とあの山が目の前に広がっていた。

確かあの時は不意打ちの出会いだった、

目の前に現れた紅の富士にやられてしまったのさ、

どうだいこの凛とした姿は

今日は最後まで見届けるよ

あの赤富士が現れるまで

太陽が西の果てに沈み始めた

空の青が赤みを帯び始めている

同じ場所に座り続けて 刻一刻と移り変わる

彩りにどんな言葉が必要だというのだろうか

太陽が沈んでほんの僅かな時間だけ

富士が赤く染まるはずだと信じて待つ

「来た! 来たよ!」

あの時の不意打ちの赤富士ではない

待って 待って 待ち続けた果ての

『赤富士』でした。