春は桜を求め、
夏は祭りの中に潜り込み
秋は紅葉の彩りにうっとりし、
冬はこの国の静寂を楽しむ、
こうして一年中旅をしていることになるのですよ、
旅を日常にしてみようと始めたことだけれど、
毎年同じことの繰り返しになってしまうと、
俄然テンションが下がってしまうのは、
生来の飽きっぽい性格なのでしょうね。
秋になると決まって、日光だ、那須だ、いや信州だ
と彩り鮮やかな土地を求めて勇んで旅を続けるておりましたが、
今年はどうしたことか全く行く気が起きないのですよ、
別段、身体の不調というわけでもなく、いや、もしかしたら
身体が旅を要求しなくなったのかな・・・、
空を見上げ、
「よし、行くぞ!」
と口に出してみても、走り出した車の向かう先は 東京、
どうやら、旅とは前へ進むことと考えていたのですよ、
せめて、春夏秋冬どの季節かを、待つ ことに当ててみよう
そう、いつもこちらから迎えにいくのではなく、
季節の方がやってくるのを
じっと待つ というのも案外いいかもしれない、
人を待つように、季節を待つのなら・・・
そうだ、秋がいい、静かに彩を変えていく秋、
しかし東京が彩りで覆われるのは実は秋ではなく、
冬の季節にならないと感じられないのですよ。
木枯らし一号がやけに遅くなって吹いた翌日、
何時もなら散歩のコースを旅するように
歩き出してみる、
東京も捨てたもんじゃないじゃないか、
久しぶりの青空に地味な色の紅葉がなぜか愛しい、
銀杏の黄葉には少し早いけれど、ケヤキはすでに
散り始めている、
一斉に散らないのが東京紅葉、
これは当分楽しめますよ。
何しろみんなすぐ近くなんですからね。
じっと立ったまま衣装を変える 東京紅葉・・・
歩くことに疲れたら、何処にでも洒落た店が暖かく
迎えてくれる。
冷えた身体に薫り高い珈琲が染みる、
これも旅と言えない事もないか・・・
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