『ナガメ』 北原白秋
カガヤクモノハミナキエヌ、
キエタルモノハマタヒカル、
ヒカリ、キエ、
キエ、ヒカリ、
ヒカリツキセズ、ヒネモス、ケフモ。
(白金之独楽より)
夜来の雨が上がると、
にわかに秋の陽が辺りを
浮き上がらせていく。
雨に濡れた紅葉にあたるヒカリこそ
いのちを輝かす源そのもの
内苑に続く石畳にまだ残り香の雨の雫
老婦人たちの会話がしっとりと濡れている
胸いっぱいに吸い込んだ空気がおいしいと
白雲邸をそっと見上げる
横山大観、下村観山、
安田靫彦、前田青邨、小林古径・・・
みんなこの小路を歩き、まばゆいヒカリを
絵筆にしたためたのだろうか
人間の飽くなき探究心を
自然の神がそっと手を貸したとしか
思えぬ演出こそ ヒカリそのもの
聴秋閣にて一年ぶりの秋を聴く
京都相楽郡加茂の燈明寺から移築された
三重塔の向こうに秋の陽が沈む
届かなくなった谷の奥からヒカリが
ひとつまたひとつと消えていく
宵闇と混ざり合った晩秋の空を
飽きることなく眺めつくす
消えながらまだヒカル
神のまなざしを・・・
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