東京の桜が開花して間もなく三週間ですよ、

未だに散らずに頑張っているのは奇跡みたいじゃ

ないですかね。

桜の散る姿に重ねられた若者の命が次々に消えていった

戦争の傷跡を引きずっていた70年前、

上野の山から桜が消えてしまいました。

生きるためなら、人は善悪の区別などつけやしない、

寒ければ薪となって桜は次々に切られていく、

地下道には、親を亡くした浮浪児という名の子供達が

空き腹を抱えて空ろな眼で彷徨っていた。

戦地から命だけを残して戻った大人たち、

もし地獄があるとしたら、あの光景だと人は言うに違いない。

二度と戦争などするものかと誰もが思い知ったあの戦災の上野に

心ある人々がもう一度桜の苗木を植えた。

あれから70年、大きく育った桜の木の下で、

人々は年に一度の平和を噛み締める、

「桜は平和の象徴だ!」と。

もうあの日のことを思い出すことはほとんどなくなりました。

いいんですよ、桜を眺めながら

「酒が飲めるぞ!」

って集まれるのは平和の証なのだから・・・・

不景気という風をまともに正面から受けて元気がないのか

と思ったのは、とんだ大間違いでありました。

「相席お願いします」

案内で座った席は、若いOLさんたちのお隣り、

こちらは おでんにウーロン茶でクイと飲めば、

お隣は、大ジョッキでグビリ!

「あら、おじさん飲まないの」

て けしかけられても、

「飲めないの」

とは口が裂けても言えませんやね。

「ウーロンハイやってるから、よかったらおでんやりなよ」

「ご馳走さん、得した!」

まあ、屈託がなくていいですね。

散る桜が酔いどれ娘のジョッキにはらり

「サクラビールだ!」

おじさんは、急に用事を思い出したからとオヨビ腰で席を立つ、

「おやじ 逃げるのか」

まったく酔っ払った若い娘ほど手に負えない生き物はございませんでしょ。

やれやれと池の辺で夕涼み、酔った気分になれたのは、

やっぱりサクラの御蔭ですよね。

サクラの下で騒ぐのは、平和の証拠、まあ、硬いことは言わず

大目にみてやってください、

サクラが散ったからといって、命をとられる訳じゃないのですからね。

見渡せば 柳桜を こきまぜて

みやこぞ春の 錦なりける 素性法師

てな気分ですな。

(2017年の さくらでございます)