まだ松の内も明けないくても季節は何事もなく

進んでいくもの、

「新年の喜びを申し上げます」

と口にしていたのもつかの間、

今日からは

「寒中お見舞い申し上げます」

この国の仕来りは実にきめ細かいですな。

そういえば 松の内 というのは 元来1月15日までだったはず、

特に関東では1月7日までを松の内としているようで、

それには、時の幕府が寛文2年の1月6日に

「1月7日をもって正月飾りを納めること」

とお触れを出してからは

7日までを松の内とするようになったらしいのですが、

この歳時というのも、時には権力者によって変えられてしまうことが

あったのですね。

今の政府(国民が選んだのです)が圧倒的な支持(本当は国民の20%くらい)

を受けたからと、何時 おかしなお触れを出すやもしれませんよ、

「そんなこと頼んだ覚えはない」

と後になって嘆いても、後の祭りというものですよ。

松の内から口をとんがらせてもせんないこと、

気分を変えてさてと、春を感じるものはないかいな と

やってきたのは、いつもの百花園、

つい二日前に来たばかりですが、それでも落ち葉の下からは

微かな芽吹きを見つけることが出来るのです。

しゃがみこんでいる先客に

「何が見つかったんですか」

「つ・く・し つくしが頭をもたげているんですよ」

「へーっ、誰も気付きませんね」

「人知れず知らないところでそっと息をするみたいな生き方

に惹かれるのですよ」

「そうか、人間はすぐに目立ちたがりますものね

オレが、ワタシがってね」

微かに匂ってくるのは 蝋梅ですね、

梅に先駆けて香りで春を感じさせてくれています、

寒椿に見とれていると、三椏がもう蕾を膨らませていますよ、

枯れ葉色に染まった庭内にも確実に春を待つ息吹は

感じることが出来るのです。

百花園の名物は 七草籠

 セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ

をひと籠に並べた美しいものですが、今年はすでに売り切れ、

そこへ、鬼姫様から電話、

「帰りに七草を買ってきてくださいね、明日の朝は七草粥ですからね」

古風な鬼姫様は歳時にはことのほか詳しいのでございます、

冬至にはゆず湯、大晦日は年越し蕎麦、元旦には御屠蘇に母親から

受け継いだ御節に九州式の具沢山のお雑煮、

七草粥はもう半世紀もかかさずいただいておりますよ。

おかげで、無病息災、元気でこうして歩き続けていられるのですね、

「アリガタヤ、ありがたや!」